ノーベル賞経済学者ディートンが問う「格差の国の経済学」とAI倫理の新書
ノーベル賞経済学者ディートンが問う格差とAI倫理

東洋経済オンラインの書評コーナー『今週の3本』では、2026年6月27日付で3冊の新刊を取り上げている。いずれも現代社会の核心を突くテーマを扱っており、格差問題、身体とアイデンティティ、そして人工知能の倫理について深く考察する内容だ。

『格差の国の経済学』:主流派経済学者が内側から批判

1冊目は、2015年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン著『格差の国の経済学 経済学者は世界をどう破壊し、もとに戻すために、毎日何をしているのか』(江口泰子訳)。評者はBNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏。

ディートンはスコットランド生まれで、イングランドで学び、アメリカで研究を重ねた移民でもある。家族で初めて大学に進んだ彼にとって、教育は単なる人的資本の獲得ではなく、階層を超えるための経路だった。本書には、主流派経済学の内部に身を置く研究者の視線と、移民としてアメリカ社会を眺める者の違和感が同居していると河野氏は評する。

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ディートンは前著『大脱出』(2013年)で人類が貧困や病、短命から脱出する過程を描いたが、脱出は常に不平等を伴うと指摘。2020年の『絶望死のアメリカ』(妻アン・ケースとの共著)では、取り残された人々の苦痛が薬物やアルコール依存、自殺、寿命低下として噴出するアメリカを分析した。本書では格差を分析対象としつつ、経済学が見落としてきた問題を問い直す。

『体の居場所をつくる』:摂食障害やALSから見える身体の危機

2冊目は『体の居場所をつくる』。著者は明らかにされていないが、書評では摂食障害、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、国籍などによって引き離された「体」を取り戻す試みがテーマとされている。身体と社会の関係性を問い直し、現代人が抱える身体的な疎外感やアイデンティティの危機に迫る内容だ。

『AI人類学 生成AI時代の超倫理』:日本とは異なる文化からの警告

3冊目は『AI人類学 生成AI時代の超倫理』。生成AIの急速な普及に伴う倫理的問題を、人類学的視点から考察する。書評では、日本とは異なる文化背景から、過熱するAIブームへの懸念が示されている。具体的な事例として、AIによる差別やプライバシー侵害、雇用への影響などが議論されているとみられる。

東洋経済オンラインの書評は毎週土曜日に更新され、会員限定で全文が読める。今回の3冊は、経済学、身体論、AI倫理と多岐にわたるが、いずれも現代社会の不平等や不確実性を浮き彫りにする内容となっている。

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