経血の穢れを理由に、月経中の女性を不浄視する「月経禁忌」は今も世界の一部で残る。食に関するタブーとして、日常生活に根付いているものも多い。文芸時評9月号は、そうした禁忌を天地開闢の気宇壮大さで語りなおす。
『文学界』9月号の文芸時評
今回の文芸時評では、『文学界』9月号を対象に、血の池地獄のイメージとともに広まった月経禁忌の系譜をたどる。経血を穢れとする観念が、どのように文学作品や社会通念に影響を与えてきたのかを考察する。
『生理用品の社会史』が紹介する世界の禁忌
生理用品の歴史をひもといた異色の研究書である田中ひかる『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)では、月経中の女性が食事に使ったバナナの葉を食べた牝牛は衰弱死する(コスタリカ)、月経中の女性がいるとマヨネーズが上手に作れない(フランス)といった事例を紹介している。
インドやアフリカには、月経中の女性を家屋の片隅に閉じ込めたり、調理の火や鍋釜を他の家族と別にする「別火」の慣習もあった。日本でも、月経中の女性を隔離する月経小屋が西・南日本を中心に存在し、昭和40年ごろまで実際に利用されていた地域もあった。
ネパールのチャウパディと現代の悲劇
ネパール西部では「チャウパディ」と呼ばれる月経小屋の慣習が現代も残っており、2016~17年には小屋の中で寒さに耐えかねておこした火の煙に巻かれたり、侵入してきた毒ヘビに嚙まれたりして少女が相次いで死亡する事件も起きた。



