二一世紀が四半世紀を過ぎた今日でも、世界中で戦火は収まらない。無人機やドローン、長射程ミサイルが無慈悲に攻撃を加え、多くの人命を奪うが、最後に勝敗を決めるのは「人」である——。北川敬三著『フォークランド戦争』(ちくま新書)は、40年以上前に南大西洋で繰り広げられたイギリスとアルゼンチンの戦争を取り上げ、その点を鋭く解説する。
民主主義対専制主義の戦い
フォークランド戦争は、民主主義国家と専制主義国家が対峙し、近代戦の装備・技術と作戦能力が陸海空の三次元全てで総動員された。組織と人材の質によって勝敗が分かれ、住民保護の視点も重視された戦いでもある。この戦争は、戦争抑止とともに、万一戦端が開かれた場合に「いかに戦うか」について、21世紀の我々に多くを教えている。
著者はこの戦争を作戦術のレンズで読み解く。用いられる五つのレベルは、政略、戦略、作戦、戦術、術科/技術である。政治がいかに決めようと、軍事がいかに強大でも、この五つのレベル全てがうまくかみ合わないと、最終的には勝利を得られない。
ロジスティクスと人間が決める
イギリスの領土とはいえ、本国から南西一万三〇〇〇キロに位置し、住民も二〇〇〇人ほどしか住んでいなかったフォークランド諸島。国家の威信を賭けて派兵したイギリスにとって勝敗を分けたのは、ロジスティクスを維持し、必要な場所に必要な戦力を投入できる自由を確保できるかどうかだった。本書はその全てを五つのレベルから説き起こし、わかりやすく説明する。
この「最後の古典的陸海空領域の戦争」での帰趨を決したのは、「戦争はロジスティクスと人間が決める」という古典的な命題であった。著者自身がインタビューを試みたイギリス海兵隊の司令官として上陸後の陸上作戦を指揮したトンプソン准将の言葉は重い。「要は『人』だ。よく訓練された人材こそが鍵だ。最終的に、事を成すのは人間である」



