村上春樹3年ぶり新作『夏帆 The Tale of KAHO』文芸評論家が読む深い感想
村上春樹3年ぶり新作『夏帆』文芸評論家が読む深い感想

村上春樹氏の3年ぶりとなる長編小説『夏帆 The Tale of KAHO』(新潮社)が発売され、早くも話題を集めている。文芸評論家の高澤秀次氏は、本作を「期待通りの傑作」と評し、村上春樹的世界の特徴である「壁」や「穴」といった危機的な場所が再び読者を引き込むと指摘する。

ヒロインが踏み入れた「裂け目」としての世界

本作のヒロイン夏帆は、偶然にも「アイデンティティ・ポリティクス」を突き崩す「裂け目」としての異世界に足を踏み入れる。この世界は人間的でありながら、あまりに人間的な政治性を内包しており、村上作品に特有の「暴力」が重要な役割を果たす。暴力は、改変された世界から元の世界へ帰還するための手段として用いられる。

「シロアリ」に憑依された母の奪還

物語の核心は、「シロアリ」に憑依された「母」の奪還にある。これは母子の家族物語における「裂け目」への周到かつ果敢なアタックとして描かれる。夏帆は境界を越え、善玉の「不法侵入者」(「ありくい」)と結託し、悪玉の「不法侵入者」(「ジャガー」や「シロアリ」)を暴力で排除する。

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次回作は『1Q84』続編か

高澤氏は、本作を堪能した読者が期待する次回作について、作者自身が「あの後にも物語はある」と語ったことから、オープンエンドで終わった『1Q84』の続編以外にないと断言する。二つの世界にまたがる「境界線」の物語的仕掛けが、次回作で明らかになる可能性が高いと述べている。

なお、本作の書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプする仕様となっている。

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