「人間は争うために生きてきたんじゃない」ゴリラ研究者が絵本で訴え
ゴリラ研究者が絵本で「人間は争うためでない」と訴え

ゴリラ研究の第一人者である霊長類学者の山極寿一氏(京都大学前総長)が、子どもたちに向けた絵本『ぼくたちは、あらそうために生きるのか?』を刊行した。同書は「人間は争うために生きてきたんじゃない。みんなで協力し合って仲良く暮らすために生きてきたんです」という力強いメッセージを発信している。絵を手がけたのは、人気絵本シリーズ「あらしのよるに」で知られるあべ弘士氏だ。

人類の進化と共感の重要性

山極氏は、人類とゴリラやチンパンジーは共通の祖先を持つと指摘する。約700万年前、ヒトは地上に下り二足歩行を始めたが、鋭い牙や爪を持たないため、猛獣などの脅威から逃れ生き延びるには互いに助け合う必要があった。その結果、ヒトは「相手の気持ちを思いやる、共感の気持ちを育てながら進化してきた」と説明する。

しかし、約1万2000年前に農業を始め定住するようになってから、ヒトは争うようになった。だが、それは長い人類の歴史の中ではごく最近の出来事にすぎず、「暴力で相手を支配することが、ヒトの本性だとはいえない」と山極氏は強調する。「今の世界は簡単に変えられるんです」と力強く訴えかけている。

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ゴリラ研究から見える人間の本質

山極氏は東京生まれで、安保闘争の時期に高校時代を過ごし、京都大学に進学。20代半ばでゴリラ研究のためアフリカを訪れ、以来数十年にわたって現地に通い続け、ゴリラを通じて「人間とは何か」を考えてきた。「人間の本質はゴリラとすごくよく似ている。人間もゴリラも負けず嫌い。でも、ゴリラの負けず嫌いは『相手と対等でありたい』という願望の表れなんだ」と語る。

また、AI(人工知能)の発達により身体が置き去りにされ、言葉によって人々の分断が進んでいることに強い危機感を抱いている。京都大学長を経て現在は総合地球環境学研究所長を務め、東奔西走する日々を送る。「限界が来たら、ゴリラがポンポンって肩をたたいてくれるんだ」と笑い、風のように取材場所を去った。

絵本は偕成社から刊行され、価格は1540円(税込)。

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