映画『ちいかわ』が台湾で6歳未満NGに…灰色に塗られた島民たちの正体とは
映画『ちいかわ』台湾で6歳未満NG、灰色の島民の正体

公開9日目で興行収入40億円を突破した『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。映画解説者の中井圭氏は「大ヒットも納得の完成度の高さだ。本作のポイントは、よくできたイヤミスのような後味。それを引き出したのが灰色に塗られた顔のない島民たちだ」と評する。

絵柄と恐ろしい物語のギャップ

本作が大きな話題を集める一因は、愛らしいキャラクターの見た目からは想像しにくい恐ろしさにある。なかでも、質の良いイヤミスのような後味を引き出しているのが、灰色に塗られた島民たちだ。

「ちいかわ」世界の明るく楽しげな画面のなかに佇む、無彩色の彼ら。ひと目では区別のつかない没個性的な造形は、罪の所在を集団のなかに埋没させ、善と悪の境界を曖昧にする。その姿自体が、本作の主題を示している。

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募集のチラシを見て“異界”の島へ

この世界では、日常と異界が分かれていない。森の奥、洞窟、拾った物、無料の食べ物、条件の良い仕事。暮らしのすぐ隣に、こちらの法則が通じない場所への入口がある。

『映画ちいかわ』の発端も、まさにそれだ。ちいかわたちを島へ導くのは、高額な報酬と実質無料の食べ物をうたう1枚のチラシ。昔話なら神や妖怪が差し出した誘惑を、現代では広告が代行する。

「人魚を食べれば永遠の命が…」

海を渡り、異界の島でもてなされ、その歓待の奥に取り返しのつかないものを知る。その型は浦島太郎を思わせる。浦島太郎では、異界での幸福な時間が帰還した瞬間に喪失へと転じる。本作の歓待もまた、やがて別の顔を見せる。

「ちいかわ」は、そこで起きる怪異の原理をほとんど説明しない。主人公は真実を解明して秩序を回復する英雄ではなく、巻き込まれ、その一部だけを見て日常へ戻る。

灰色のモブたちは“推し”を拒む

「ちいかわ」は、小さくてかわいいキャラクターたちが過酷な社会を生きる物語とも言える。彼らは働き、資格試験を受け、危険な討伐に出かける。労働をめぐる現代の寓話という面があることは確かだ。

だが、それだけでは作品の持つ奇妙な深さを捉えきれない。この作品はむしろ、日本の伝承や民話が持っていた物語の文法を、令和の生活感覚のなかへ置き直したものではないか。

罪と報いの物語は観客に託される

「かわいいから許す」とはならない。本作は単純な“被害と加害”に分けられない“殺しの罪”と“共同体の罪”を描く。その罪と報いの物語は、観客に託される。

なお、本作は台湾では6歳未満は鑑賞不可とされている。

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