一部区間の廃止が取りざたされていた富山地方鉄道本線(電鉄富山―宇奈月温泉)を巡り、県や沿線7市町村は21日、全線を維持する方針でまとまった。今後、国の支援を受けるべく、再構築事業の採択に向けた議論を続ける。ただ、鉄路維持には自治体の財政負担は避けられず、懸念する意見も出ている。
並行区間廃止の効果は限定的
この日、県が議論を主導する「第2回地鉄鉄道線再構築検討会」が富山市内で開かれ、新田知事と沿線7市町村の首長や副市長、地鉄の新庄一洋社長らが参加した。
これまで、あいの風とやま鉄道との並行区間(滑川―新魚津)について、〈1〉現行維持、〈2〉廃止、回送は継続、〈3〉廃止、線路撤去――の3パターンで検討が続いていた。それぞれで必要な費用や営業収支などについて昨年度、黒部市などが試算しており、県が改めて3パターンを精査し直した結果が、この日公表された。
2026年度から10年間でかかる費用では〈1〉が127億円、〈2〉が149億円、〈3〉が約170億~173億円となり、並行区間を廃止しても費用面での削減効果は薄いとする黒部市などの調査結果を改めて裏付けた。
観光利用では将来的に増収が見込めるとし、いずれも7億~9億円の赤字と試算されていた10年後(2035年度)の営業収支は、6億円前後の赤字まで縮小した。
検討会では、昨年度黒部市の市民団体が公表した、赤字区間を維持した場合に鉄道が地域社会にもたらす「社会便益」が、年間で120億円に上るという試算について、有識者から「妥当性がある」との意見が出た。
全線維持へ賛否
これらの試算を踏まえ、本線は現行維持を前提に、ほかの立山線、不二越・上滝線と同様に、国の再構築事業採択に向けた検討を進めることを県が提案した。
新庄社長は「鉄道を生かすという視点であれば、再構築事業は非常に魅力がある。全員が一致する方向性をこの会議でしっかり決めてほしい」と求め、市町村長からも理解を示す声が上がった。
一方で、今後想定される自治体の費用負担を巡り、慎重な意見も相次いだ。水野達夫・滑川市長は、市民向けのアンケートで半数が負担に否定的だったことなどを踏まえ「費用負担のあり方が全く議論されておらず、(全線維持に)賛成反対を申し上げる段階に至っていない」と発言。中川行孝・上市町長も「今『一緒の船に乗りますよ』というのは厳しい」と話した。これに対し、新田知事は「収集がつかなくなり、議論が前に進まなくなる。(全線維持する)方向性を固めたい」と促し、最終的に了承された。
新田知事は、検討会後に「3路線を一体として検討を進める上で一歩前進した。議論をさらに加速していきたい」と強調した。
立山線も再構築事業へ
21日に行われた検討会の立山線部会では、県と沿線の富山市、立山町、地鉄が、寺田―立山間で国の交付金を活用した再構築事業を実施する方向で合意した。
不採算区間で廃止が検討されていた岩峅寺―立山間に加えて、寺田―岩峅寺間も含めることにした。寺田駅は本線との分岐点にあり、岩峅寺駅は不二越・上滝線との結節点にあたる。
部会の事務局を務める町が提案した。町の担当者は「立山線は観光路線として重要だが、地域活性化を考えるなら、生活色の強い寺田―岩峅寺間も重要だ」と説明した。



