夏休み特別企画「千潮丸」体験航海、館山港で開催
夏休み特別企画「千潮丸」体験航海が館山港で開催

8月10日、関東海事広報協会千葉支部による夏休み特別企画「漁業実習船『千潮丸』体験航海」が館山港にて実施された。夏休み中の子どもたちが千葉県立館山総合高校海洋科の実習などで用いられている「千潮丸」に乗り、船内見学などを通じて海での仕事について学ぶ本企画。2026ちばポートアンバサダーの鈴木ももかさんと、11組の一般参加者らが参加した。

水産業を学ぶ職業高校の実習船に乗船

小学校4年生〜中学生と保護者を対象に、船や船員の仕事、水産系高校の生活について理解を深めるために企画された本イベント。千葉県の水産・海洋系高校が使用する漁業実習船「千潮丸」の船内見学と航海体験が行われた。

水産高校(海洋高校)は海や魚、水産業に関する専門的な知識と技術を学ぶ職業高校。海のある都道県に1校から数校が存在し、全国46校すべてが都道府県立の公立校だ。館山総合高校は平成20年4月に館山高校と安房水産高校が統合して開校した。

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千葉県には安房水産高校のほかに銚子水産高校もあったが、近年は廃校や統合が進み、水産高校を名乗る学校は全国的に減少している。

館山総合高校海洋科の前身となる安房水産高校は、安房群立安房農業水産高校として大正11年の創立。昭和23年、千葉県立安房水産高校と改称され、昭和27年に専攻科(3年制の本科を卒業後、さらに深く専門的な知識や技術を学ぶための1〜2年程度の課程)が設置された。

現在、館山総合高校の全日制には工業科・商業科・海洋科・家政科があり、旧安房水産高校の校舎は水産校舎として使用されている。昨年度(令和7年度)は小笠原諸島・父島への航海と同地での潜水実習をはじめ、「千潮丸」を使って4回の沿岸航海の実習が行われた。

また、同校では年1回、海洋生産科と海洋工学コース3年生と専攻科1年生が乗船し、約1週間の「マグロはえ縄漁法」の演習などを行う50日間の遠洋航海実習も実施。遠洋航海実習ではホノルル港に入港し、オアフ島での上陸学習なども生徒・学生の楽しみのひとつとなっているようだ。

これらの実習で用いられる「千潮丸」は千葉県教育庁が所有する船で、「マグロはえ縄漁業」に従事する499総トンの漁業実習船だ。

航行区域は第3種漁船、遠洋航海の時には第3種漁船(国際航海)という区分の船となる。1330KW(1000馬力)の主機関(メインエンジン)を持ち、航海速力は12.5ノット。プロペラの羽根の角度(ピッチ)を変えることで前後進が可能な可変ピッチプロペラを推進機に採用している。

可変ピッチプロペラはエンジンを止めたり逆回転させたりせずに、素早い前後進の切り替えができるため、前進・後進・停止をするシチュエーションが多いはえ縄漁を行う漁船などでは多く採用されているそうだ。

チャイムも時間割もない船上の学校生活

館山港に到着すると「千潮丸」の職員によって本人確認と体調の確認が行われ、乗船後はさっそく4つの班に分かれて船内を見学した。

男子生徒の生活区画は4人部屋が基本。ベッドは横70センチ、縦2メートルとのことでセミシングルよりも横幅がやや小さいのが特徴だ。女子生徒の生活区画は2人部屋で、通路に出なくても風呂・洗濯が完結するつくりとなっている。

浴室には温海水掛け流しの浴槽がある。船が揺れてもお湯がこぼれないよう、浴槽は深めの設計となっており、漁船の場合はエンジンを冷やすために使った冷却水を使った海水風呂が一般的に多いようだ。そのため、最後に清水・淡水のシャワーで潮を落とす入浴スタイルになるという。

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船で働く船員の仕事は、主に操船や荷役作業などを担当する甲板部とエンジンやボイラーといった機械の整備を担当する機関部に分かれている。また、どちらの部署でも「海技士」という国家資格を持つ職員(オフィサー)と、職員を補助する部員(クルー)という船員が働いている。

「航海」「機関」の海技士の資格は1級から6級まであり、船の大きさやエンジンの出力、航行する区域などによって必要な資格や搭乗する船員の人数が決まる。

「千潮丸」は最大搭載人員63名のうち23名が船員で、航海中は船長の指揮のもと、1〜3等の機関士・航海士が午前/午後で4時間ずつ当直し、24時間体制で船を運航している。生徒は旅客ではなく「その他の乗組員」として扱われるようだ。

海洋科の生徒の船での生活は朝が早く、5時45分起床。6時から点呼などを行い、ラジオ体操や掃除で1日が始まるという。その日の状況に合わせた学習を行うため、航海実習には厳密な時間割はない。当直明けの船員への配慮もあって、チャイムもない点も通常の学校での学びとの違いとのことだ。

イベントの参加者たちは「イクジス(ECDIS)」と呼ばれる電子海図の機器が並ぶ船橋・ブリッジや機関部の制御室を見学。マグロはえ縄実習の作業する主甲板では、ロープを巻き上げる機械や釣り上げた魚を網で掬い上げる機械などについて説明があった。

出港後の司厨長による昼食も堪能

マグロはえ縄漁は、約150kmにもなる一本の長い「幹縄」に、約3000本の釣り針付きの「枝縄」を取り付けて海中に垂らす漁法。江戸時代に開発され、大型のまぐろの魚群から間引くように捕獲する“資源にやさしい漁法”とされる。

マグロはえ縄漁で用いる仕掛けには、ウミガメなどの混獲を防ぐために「丸針(サークルフック)」や「深めの棚(水深)」の工夫が導入されている。また、縄は「ワイヤーハリス」という金属製のワイヤーで、サメのカッターのような歯でも切れにくい一方、漁具用ハサミを使えば必要時にすぐ切断が可能だという。

遠洋マグロはえ縄漁船で捕獲されたまぐろは、すぐにエラ、内臓、ヒレを取り除かれ、血抜きが行われた後はマイナス60度の超低温の風を送ることで急速凍結される。「千潮丸」にも超低温の冷凍施設が搭載されており、漁の期間中は乗組員と一緒に生徒も防寒着などを着て庫内で作業するそうだ。

船内見学を終えて、コンパスデッキから出港の様子の見学後は昼食の時間となった。船員法では船舶所有者(船主・雇用者)が船員の乗船中の食料を支給することが義務づけられており、基本的に航海中の船内の食事は会社持ち(無料)。多くの船では、「船舶料理士」という資格を持つ司厨長によって食事が用意される。「船舶料理士」は調理師と同等の資格だが、船内の調理ではガスを使わず、激しい揺れの中でも調理しなければならない。

航海中のメニューは陸上の食事内容と大きく変わらないそうだが、デザートとパン類は比較的少ないという。航海実習中の生徒は食事の調理はできないが、配膳や片付けの作業などを手伝っているそうだ。

昼食後は3つの班に分かれて船橋での操船体験やロープワークなどの体験も実施された。操船体験では参加者一人ひとりが、実際に船の舵をとって大きな船を動かす感覚を楽しんでいた。また、ロープワークでは巻き結び(クラブ・ヒッチ)や一重継ぎ結び(シングルシートベント)、もやい結び(ボーラインノット)などに挑戦。ていねいな指導を受けながらロープと格闘していた。

台風も接近する中での開催となったが、イベント当日の館山湾は非常に穏やか。無事に3時間ほどの航海を終え、館山港に着岸してイベントは終了した。