Steam調査でWindows 11が70%超、Linuxは約4%維持—ゲーマーのOS移行加速
Steam調査でWindows 11が70%超、Linux約4%維持

Valveが公開している「Steam Hardware & Software Survey」の2026年6月版において、OS環境の変化がはっきり表れた。Windows 11 64 bitは70.44%に達し、前月から0.68ポイント増えた。一方、Windows 10 64 bitは23.56%まで下がり、前月比で0.43ポイント減となった。Linux全体は3.69%で、前月から0.30ポイント低下したものの、依然として約4%前後を維持している。

Steam調査はゲーマー中心の統計であり、企業PCや教育機関、一般家庭のすべてを代表するものではない。それでも、この数字は単なるゲームユーザーのOS比率にとどまらない。PC市場における買い替え圧力、OS移行、ゲーム互換性、そしてLinuxゲーミングの成熟度を映す鏡でもある。

Windows 11がSteam上で7割超え、移行が「標準」に

今回の最大のポイントは、Windows 11のシェアがSteam上で7割を超えたことだ。2021年の登場直後、Windows 11はゲーマーにとってかならずしも歓迎一色ではなかった。UI変更、初期の性能差への懸念、TPM 2.0や対応CPU要件への不満があり、Windows 10に残るユーザーは多かった。しかし2026年6月時点では、Steamユーザーの主流OSは明確にWindows 11になった。Windows 10はなお2割超を占めるが、かつての標準OSという位置から、移行待ちの旧世代OSへ変わりつつある。

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この変化は、ゲーム市場だけの現象ではない。Steamユーザーは新しいGPU、CPU、高リフレッシュレートディスプレイ、NVMe SSDなどを比較的早く導入する層であり、PC市場の先行指標として機能することがある。Steam上でWindows 11が70%を超えたということは、少なくともコンシューマー向け高性能PCの領域では、Windows 11への移行が「様子見」から「標準」へ移ったことを意味する。

同時に、Linuxが3.69%を維持している点も見逃せない。Windowsと比べれば小さいが、Steam上のLinux比率は長年1〜2%台にとどまってきた。そこから約4%前後へ上がったことは、Linuxゲーミングが一部の愛好家だけの領域ではなくなったことを示す。ただし、ここで「LinuxがWindowsを脅かしている」と読むのは早計だ。むしろ、Steam Deck、Proton、SteamOSというValve主導のエコシステムが、Linuxをゲーム用OSとして成立させ始めたと言える。

Windows 11普及の4つの要因

Windows 11普及の第一の要因は、Windows 10のサポート終了だ。MicrosoftはWindows 10のサポートを2025年10月14日に終了した。Windows 10搭載PCはその後も動作するが、通常のソフトウェア更新、セキュリティ修正、技術サポートは提供されなくなる。セキュリティを重視するユーザーほど、Windows 11への移行か、延長セキュリティ更新、あるいはPC買い替えを迫られる構図になった。

ゲーマーにとっても、この期限は大きい。ゲーム用PCはオンライン接続が前提で、Steam、Epic Games Store、Battle.net、Discord、各種ランチャー、アンチチートなど、多数のサービスと常時つながる。脆弱性を抱えたOSを使い続けるリスクは、単なる事務用PC以上に高い。ゲームそのものはWindows 10で動き続けても、ドライバー、アンチチート、配信ソフト、録画ツール、周辺機器管理ソフトが将来的にWindows 11を優先する可能性は高い。サポート終了は、心理的な節目ではなく、実用上の移行圧力になった。

第二の要因は、PC買い替えサイクルだ。AMDのRyzen 7000世代以降、さらにRyzen 9000シリーズ、IntelのCore Ultra世代など、新しいCPUを搭載したPCが市場に広がった。AMDはRyzen 9000シリーズをZen 5世代のデスクトップCPUとして展開し、ゲームと作業の双方で高性能を訴求している。これらの新世代PCは、ほぼ当然のようにWindows 11を前提に出荷される。ユーザーがOSだけをアップグレードしたというより、PC本体の更新に伴ってWindows 11が増えた側面が強い。

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第三の要因は、Windows 11登場当初の不安や障壁が時間とともに解消されたことだ。当初はTPM 2.0必須要件への反発が大きく、比較的新しいCPUやマザーボードでもUEFI設定でfTPMやPTTが無効になっているだけで非対応と表示されるなど、ユーザーの混乱を招いた。また、ゲーム性能の低下やDRM、アンチチート、古いタイトルとの互換性を懸念する声も少なくなかった。しかし数年が経過し、対応PCの普及やBIOS更新、メーカーの案内が進んだほか、GPUドライバーやゲームエンジン、ランチャー、アンチチート側の対応も成熟した。現在では、新規購入PCの多くがTPM 2.0対応を前提とし、「Windows 11だからゲームが動かない」という場面も珍しくなっている。

第四の要因は、Windows 11が最新のゲーム環境を前提としたOSになったことだ。Windows 11では、Auto HDRやDirectStorageなどゲーム向け機能が強化され、古いゲームの表示品質向上やロード時間短縮などが期待されてきた。加えて、NVIDIA GeForce RTX 40/50世代、AMD Radeon RX 7000/9000世代、Intel Arc系GPUなど近年のGPUは、レイトレーシングやアップスケーリング、フレーム生成などOSとの連携がこれまで以上に重要になっている。ゲーム性能はCPUやGPUだけでなく、OS、ドライバー、ストレージを含めたシステム全体で決まる時代だ。すべてのゲームで劇的な差が出るわけではないものの、Windows 11は最新ハードウェアの性能を引き出す標準環境として定着し、新しいゲームPCの前提となっている。

Linux約4%が示すLinuxゲーミングの現状

Linuxの3.69%という数字は、見方が難しい。Windowsの94.10%と比べれば、Linuxは小さな存在だ。SteamOS Holoは0.84%、CachyOSは0.52%、Arch Linuxは0.33%、Linux Mintは0.29%、Bazziteは0.27%と、内訳は分散している。

それでも、LinuxがSteam上で約4%前後を維持していることには意味がある。これは、Linuxゲーミングが「動くかどうかを試す趣味」から、「日常的に遊べる選択肢」へ近づいたことを示すからだ。

最大の転機はSteam Deckだ。Steam DeckはLinuxベースのSteamOSを搭載し、携帯ゲーム機の形でPCゲームを動かす製品だ。従来のLinuxゲーミングは、ユーザーが自分でディストリビューションを選び、ドライバーを設定し、WineやProtonを調整する必要があった。Steam Deckはその複雑さを隠し、コンソールに近い体験として提供した。ここが重要だ。Linuxが一般ユーザーに届くには、Linuxであることを意識させない設計が必要だった。

その中核がProtonだ。ValveはProtonを、Windows向けゲームをLinux上で動かす互換レイヤーと説明している。Steamworks向け文書でも、Protonは修正版Wineと高性能なグラフィックスAPI実装を用いてWindowsゲームをLinuxで動かす仕組みであり、多くのAPIがすでにサポートされ、多くのゲームがそのまま動くとされている。この仕組みにより、Linuxゲーミングのボトルネックは大きく変わった。かつては「Linux版があるか」が問題だった。現在は「Protonで十分に動くか」「アンチチートが対応しているか」「コントローラーや解像度、ランチャーが問題なく扱えるか」が問題になった。

一方で、2026年春にLinux比率が一時5%を超えたと報じられ、その後3〜4%台へ落ち着いたことも冷静に見る必要がある。Steam調査は任意参加で匿名の月次調査であり、回答者構成の変化に影響される。月ごとの増減だけで普及を判断するのは危うい。重要なのは数年単位で約4%前後を維持している点だ。Steam Deckのような管理された環境ではLinuxゲーミングはすでに実用品になった。一方で、一般的なPCではゲームや周辺機器、配信環境などに課題も残る。LinuxはWindowsの代替というより、SteamOSとProtonが支える「第二のゲーム環境」として存在感を高めている。

Steam調査をPC市場全体と見る際の注意点

Steam調査を読むうえで重要なのは、万能の市場統計ではないという点だ。Valve自身も、この調査はSteam利用者のハードウェアとソフトウェアを把握するための月次調査であり、参加は任意かつ匿名だと説明している。したがって、Steam調査は「世界の全PCにおけるOS比率」ではない。あくまで「調査に参加したSteamユーザーの環境」を示す。

第一に、Steamユーザーはゲーマー中心だ。ゲーマーは一般ユーザーよりもGPUを重視し、CPUやメモリ、SSDの更新も早い。Windows 11対応PCへの移行も、企業PCや学校PCより速い可能性がある。企業PCでは、業務アプリの検証、管理ツール、セキュリティポリシー、リース期間の都合から、OS移行が遅れることが多い。したがって、SteamでWindows 11が70%を超えたからといって、全PC市場でも同じ比率になったとは言えない。

第二に、中国市場の影響が大きい。Steamはグローバルなプラットフォームであり、中国語ユーザーの増減が月次データに大きな揺れを与えることがある。2026年1月の調査では中国語ユーザー比率の変動がWindows 10とWindows 11の比率変化に影響したと報じられた。中国市場では、PCカフェ、既存Windows 10環境、地域ごとのハードウェア構成、言語設定などが複雑に絡む。地域構成が変われば、OS比率も大きく動く。

第三に、自動翻訳や言語設定の扱いも注意点になる。Steamの言語カテゴリーは、必ずしも国籍や所在地を正確に示すものではない。UI言語、自動翻訳、地域設定、VPN、共有PCなどの要素が入りうる。そのため、言語データ単体で市場の動向を断定するのは難しい。

第四に、ハードウェア調査の統計上の特徴もある。参加は任意であり、すべてのSteamユーザーが毎月回答するわけではない。調査対象やタイミングが変われば、数値は揺れる。月次の増減よりも、数か月から1年以上の傾向を見る必要がある。Windows 11が70%を超えたことは大きな節目だが、0.数ポイントの上下に過剰な意味を与えるべきではない。Linuxの3.69%も同様で、前月比マイナスだから失速、前月比プラスだから急成長と判断するのは危うい。

それでもSteam調査には価値がある。なぜなら、PCゲーム市場の実使用環境をこれほど大規模に継続公開しているデータは少ないからだ。OS、GPU、CPU、メモリ、VRヘッドセット、解像度などが月次で見えるため、ゲーム開発者、周辺機器メーカー、PCメーカー、メディアにとって重要な手掛かりになる。万能ではないが、ゲーミングPC市場の温度を測る有力な指標だ。

Windows 10後のゲーム環境の行方

今後の焦点は、Windows 11がSteam上で80%を超えるかどうかだ。Windows 10の通常サポートはすでに終了しており、今後も新規PCの多くはWindows 11搭載で出荷される。ゲーム用PCはGPU更新やSSD増設、CPU刷新のタイミングで本体ごと買い替えられやすい。Windows 11の比率は今後も上昇していく可能性が高い。

一方で、Windows 10が急速に姿を消すわけではない。Steam上でも23.56%を占めており、対応要件を満たさないPCや古いゲーム環境を維持したいユーザー、延長セキュリティ更新を利用するユーザーも一定数残るだろう。2026〜2027年のPCゲーム市場は、Windows 11中心に移行しながらも、Windows 10が共存する過渡期になる。

Linux比率が再び5%に近づく可能性はある。Steam Deckの販売継続やSteamOS搭載機の拡大、Protonの互換性向上などが進めば、Steam上でLinuxを利用するユーザーは今後も増えるだろう。ただし、それは一般デスクトップPCでWindowsを置き換えるという意味ではない。Windowsには、ゲーム互換性、アンチチート、配信ツール、周辺機器管理、メーカーサポート、PC販売チャネルという強固な基盤がある。Linuxの伸びは、Windowsからの大量移行ではなく、SteamOSを搭載したゲーム機や携帯型PCの普及によって支えられる可能性が高い。

結論として、Steam調査が示すのは「Windows 11への移行完了」ではなく、「Windows 11中心時代の本格化」だ。Windows 10は終盤に入り、LinuxはSteamOSとProtonを軸に実用的な第二の選択肢となりつつある。だが、Steam調査はあくまでSteamユーザーの統計であり、PC市場全体をそのまま表すものではない。読むべきは、単月の上下ではなく、構造的な流れだ。新しいPCはWindows 11を前提にし、LinuxゲーミングはSteam Deck以後の段階に入り、ゲーム市場ではOSそのものよりも、互換性、配信基盤、ハードウェア統合の重要性が増している。2026年のSteam調査は、PC市場が「Windows 10後」の時代に入ったことを示す、一つの分岐点だ。