博報堂のシンクタンクであるメディア環境研究所と同研究所所長・山本泰士氏は6日、書籍『母を愛していても理不尽な要求は断っていい、とAIは言った。未来予測:わたしたちとAIはどう生きるか』を集英社インターナショナルから出版した。急速にAIが社会に浸透するなか、AIと生活者の関係の現状を解き明かし、AIに「転がされない」ための思考法を提示する一冊となっている。
大規模調査と実例から見えるAIとの新たな関係
本書の核となるのは、博報堂メディア環境研究所が実施した「グローバルメディアテック調査」だ。日本、中国、アメリカ、イギリスの4カ国・各都市900人を対象に生成AIの利用実態と意識を調査。東京では生成AI利用経験率が5割を超え、上海では9割以上が利用経験ありと回答した。さらに東京の利用者のうち約3人に1人が、仕事や学習以外の「趣味・娯楽」「AIとの対話」「暇な時」などにもAIを活用していることが明らかになった。
調査と並行して実施した日本のAI生活者へのインタビューでは、より踏み込んだ実態が浮かび上がる。AIを「熱血コーチ」として活用し、わずか1カ月でネイルサロンを開業した23歳女性や、ChatGPT内に複数のキャラクターを設定しライフプランまで相談する27歳女性、人には言えないモヤモヤを吐き出す先としてAIを使う25歳男性などの事例が紹介されている。また、上海での対面インタビューでは「彼氏の声を模倣したAI分身をつくる」「理想のキャラクターをAIで作り恋人にする」といった、より深いAI活用の様子が明らかになった。
専門家との対談とCES 2026取材レポート
本書には3人の専門家との対談も収録されている。AI研究者・今井翔太氏との対談ではAIネイティブ世代の思考と人間の存在意義を論じ、精神科医・益田裕介氏との対談ではAI依存のリスクと「パーソナリティ機能」の重要性を解説。博報堂DYホールディングス執行役員CAIO・森正弥氏との対談では「人間中心のAI」の真の意味を探る。
さらに、ラスベガスで開催された世界最大級のイノベーション展示会『CES 2026』の現地取材レポートも収録。家事全般を自律的にこなすヒューマノイドロボット、軽量AIスマートグラス、24時間心電図を計測するスマート下着など、AIが情報世界の「判断」にとどまらず物理世界の「労働」を引き受け始めている明確な変化を紹介している。
5つの未来予測で不安を前向きな指針に
本書は読者の不安やモヤモヤを「前向きにひらき直る」ことを目的として構成され、最終章では5つの未来予測を提示。「AIがちょっと怖い」と感じる人々の漠然とした不安を、未来への前向きな指針に変える一冊となっている。山本氏は「AIとどう生きるかという問いに対して、具体的な事例と思考法を提示することで、読者が自らの未来を切り拓く一助となれば」とコメントしている。



