NTTとJAXA(宇宙航空研究開発機構)、JA全農(全国農業協同組合連合会)は、人工衛星データを活用してキャベツの需給を予測し、広告や店頭販売を最適化する新たな取り組みを進めている。8月24日からは、首都圏および関西の量販店約50店舗で、需給連動型広告モデルの実証実験を開始する。
衛星データで出荷量と価格を予測
キャベツは天候や生育環境によって出荷量が変動するため、需給ギャップが生じたり、価格が変動したりする問題があった。これまで広域の圃場で継続的に状況を把握するには、経験豊富な生産者が足を使って一筆一筆確認するなど、負担が大きくなっていた。
実証実験では、衛星データを利用することで、圃場の状況や生育環境を効率的に把握。出荷量や価格変動について、実際のデータと高い相関を示す高精度な予測を導き出すことに成功したという。
JA全農とNTTの連携
JA全農によると、夏秋キャベツの出荷量は全国1位で、6月下旬から11月上旬にかけて約1億6000万個ものキャベツを生産する。JA全農 代表理事組合長の髙橋茂事務所氏は「必要な量を必要なタイミングで配給できれば、持続可能な営農の実現につながる。伝統的な営農の知恵に人工衛星という新しい技術を組み合わせることで、キャベツ生産をより強く、より持続的なものとしていきたい」と意気込む。
NTT、JAXA、JA全農は、人工衛星データに加え、現地調査データ、市場データなどを組み合わせ、キャベツの収穫時期、出荷量、価格変動の予測精度向上に取り組んできた。実証実験の結果、8週間前の情報を見ることで、出荷の情報を高い精度で予測できることがわかった。キャベツが結球した前後から、生育環境を段階に分けて把握する。
広告と店頭販売の最適化へ
今後は、キャベツの需給量に応じた、広告や店頭販売の最適化に取り組む。予測結果を基に、キャベツの需給量が増えると見込まれる時期に広告配信を増やしたり、店頭の広告を強化したりして、購買を促進する施策を実施していく。一方、キャベツの需給が減るタイミングでは、広告や店頭販促の実施時期、展開規模、訴求内容などを見直していく。
「農作物は天候や生育状況によって需給量が大きく変動する。一方、消費者の需要は需給量とは関係のない文脈の中で変動するもの。昨今では、SNSでの発信で需要が急増することもある。結果として、需給が増えているときに需要が増えないと、フードロスが生まれる。逆に、需要が上がったが、供給できないという場合は、消費者は『買いたくても買えない』状況が生まれ、生産者からすると販売機会の喪失につながる」(NTT 通信事業本部 深田博文氏)
これまで広告は、ブランドや商品、サービスの知名度を高めるために活用されるケースが多かった。今回の取り組みで、需給量に応じて需要を調整できれば、フードロスの削減に加え、価格の安定にも貢献できるかもしれないと、深田氏は展望を語る。
具体的な取り組みとしては、8月24日から、首都圏および関西の量販店約50店舗で、JA全農産キャベツの出荷量や価格に応じて、広告と店頭販売を連動させる「需給連動型広告モデル」の実践的市场投入を進める。
広告モデルの実践では、味の素が協力に名乗りを上げた。キャベツの需給予測に連動し「Cook Do」〈回鍋肉用〉のメニュー提案を店頭・広告で実施していく。
NTTの深田氏は、同取り組みの展望を以下のように語った。
「広告、あるいは店頭販売を、需給と需要をつないで、社会全体の需給を良い状態に近づけるための仕組みとして捉え直していきたい。こうした仕組みが確立されれば、他の作物、他の地域にも取り組みを広げていきたい」



