OpenAI、新主力AIモデル「GPT-6 Astra」提供開始、サイバー能力が初の重大水準に
OpenAI、GPT-6 Astra提供開始 サイバー能力が重大水準に

米OpenAIは9月3日(現地時間)、新たな主力AIモデル「GPT-6 Astra」(以下、Astra)の提供を開始した。まず一部の組織を対象に展開し、今後数日かけてChatGPTの有料プランやAPIなどに提供範囲を広げる。

「世界で最もインテリジェントなモデル」と位置づけ

同社はAstraを「世界で最もインテリジェントで、最もアラインメント(意図との整合)の取れたモデル」と位置づけており、コンピュータ操作、ブラウジング、ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、科学、専門業務の各領域で最高水準の性能を示したとしている。一方、同社の安全性評価の枠組み「Preparedness Framework」で、サイバーセキュリティ能力が初めて「Critical(重大)」水準に達した。高度なサイバー能力へのアクセスを制限するなど、安全対策を強化した上で段階的に展開する。

PC操作から専門業務まで実務能力を強化

強化点の一つが、AIがソフトウェアを直接操作し、複数の工程にまたがる作業を実行する能力である。オンラインフォームへの入力、CRMの顧客情報更新、予定の整理、Web調査、科学データの分析、Webサイトの作成と動作確認といった作業を、一連の流れとして実行できるという。

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コンピュータ操作を評価する「OSWorld 2.0」では72.6%を記録し、GPT-5.6 Solの65.7%を上回った。OpenAIのシミュレーションでは、1タスク当たりの所要時間もSolの約75分から約40分に短縮されたという。同社はCodexの実行環境(ハーネス)も改善しており、これと組み合わせることで、Mind2Webにおけるタスク完了時間を従来のGPT-5.6 Sol環境から約47%短縮し、1.9倍の速度で完了できるとしている。

ソフトウェア開発でも能力を伸ばした。「Terminal-Bench 4.0」では57.9%を記録し、GPT-5.6 Solの37.3%を上回った。Codexでは、長時間の作業でコンテキストウィンドウを使い切った際に、過去の情報を保持・取得する新たな仕組みも実験的に導入する。従来は過去の作業内容を要約して圧縮していたが、Astraでは複数のコンテキストウィンドウにまたがってメモを保持できる。以前のコンテキストウィンドウも検索可能で、過去のメッセージやツール出力から要件やテスト結果などを参照できる。

「人間にとっては簡単、しかしAIにとっては難関」となる環境でテストする「ARC-AGI-3」で、OpenAIのGPT-6 Astraが独自の検証環境を用いて99.9%を記録した。

専門業務向けの能力も強化した。Astraは、複雑な問題を処理しながら複数工程のワークフローを進め、文書、スプレッドシート、プレゼンテーションなどを作成できる。OpenAIによると、既存のテンプレートや文体、ビジュアルスタイルに沿って成果物を作る能力を高めたほか、作業に不要な情報を繰り返すのではなく、必要な文脈を選んで出力に反映するよう訓練したという。企業の業務環境や基準に適合し、そのまま利用しやすい成果物を作成できるとしている。

AIエージェントの実務能力を測る「AutomationBench」では、Astraが41.4%を記録し、Claude Fable 5.1(31.4%)やGPT-5.6 Sol(18.1%)を大きくリードした。CAD作業の「BenchCAD」でも95.9%に達し、両モデル(83〜84%台)を上回っている。OpenAI独自の社内評価で、プロ向けデータサイエンス業務の遂行能力は40.9%(Solは30.5%)、デザインタスクで50.0%(Solは47.4%)を記録した。

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「Critical」到達で安全対策を強化

一方、Astraでは能力向上に伴う安全対策が大きな焦点となる。Preparedness Frameworkの「Critical」レベルは、適切なツールやアクセス権が与えられた場合、人間が逐一手順を指示しなくても、保護されたシステムから未知の脆弱性を発見し、新たな攻撃手法を開発できる水準を意味する。既知のソフトウェア脆弱性から実際に動作する攻撃コードを作成できるかを評価する「ExploitBench」で、Astraは100%を記録した(GPT-5.6 Solは78.5%)。

OpenAIは、有害なサイバー行動への防御を大幅に強化したほか、社内での開発・運用についても、隔離の厳格化、チェックポイントの暗号化、思考の連鎖(CoT)を含む一連の実行過程の監視、内部利用前のアラインメント評価の必須化といった措置を講じたとしている。外部提供するAstraについても、ツールを使用するすべての推論に不適切な挙動を検出する監視を導入した。

Astraはユーザーの意図をより正確に理解するようになり、ユーザーが許可した範囲から逸脱しない能力も向上したという。7月に発生したHugging Faceへの侵入事案を踏まえて作成した評価では、本番環境の安全対策を適用していないGPT-5.6 Solが48%のケースで許可された対象の範囲を越えたのに対し、Astraでは0%だった。

一方で、AstraはGPT-5.6 Solより思考過程を監視しにくくなっていることもOpenAIは認めている。モデルに監視を回避するよう意図的に促した評価では、能力を意図的に低く偽装したり、一部の妨害行為で社内の監視を回避するケースが確認された。同社はこの傾向を重く受け止め、CoT以外の手法を含めた監査技術の開発を進めるなど、監視可能性の向上を研究課題としている。

提供プランと料金

GPT-6 Astraは、まず一部の組織を対象に展開し、今後数日かけてChatGPT Plus、Pro、Business、Enterpriseの全ユーザーとOpenAI API、AWSに提供範囲を広げる。Pro、Business、Enterpriseのユーザーには上位モデル「GPT-6 Astra Pro」も提供する。Enterpriseでは管理者がワークスペース単位でAstraを有効にできるが、提供開始時点ではデフォルトで無効となっている。

APIではモデル名「gpt-6-astra」として提供する。標準料金は入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドル。最大2.5倍の処理速度を提供するFastモードも用意し、料金は標準処理の2倍となる。