自然界に存在しないウイルスをAI(人工知能)で設計し、実際に機能することを確認したと、米アーク研究所などのチームが6日付の米科学誌サイエンスで発表した。昨年9月に査読前論文として公表し、今回、正式に採択された。医療利用の可能性を広げるとともに、バイオテロのリスクを示す事例として受け止められている。
AIが設計した「機能する」ウイルスの衝撃
チームは、専用のAIモデルに出力させたDNA配列の候補をもとに、細菌に感染するウイルス「ファージ」を設計した。ファージはDNAがたんぱく質の殻に包まれた単純なウイルスで、DNAの違いがその性質を決める。設計通りに合成したウイルスは、実際に大腸菌を死滅させることができた。
期待されるのは医療への利用だ。ファージは、抗生物質などの薬剤が効かなくなった「薬剤耐性菌」も攻撃できる。AIで設計した多様なファージを組み合わせることも可能だ。
「安全に制御するガバナンスない」
一方、AIがバイオテロに使われる懸念も、現実味が増したことになる。サイエンスが論文と同時に公開した解説記事で、米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターのトーマス・イングレスビー教授らは「生命科学分野への応用が有望だが、同時に緊急のバイオセーフティーとバイオセキュリティーに関する問題も提起する。生成AIでウイルスゲノムを構成する能力はすでに存在するが、安全に制御するためのガバナンスは確立されていない」とした。
AIによるバイオテロの懸念については、すでに米AI企業から示されている。6月にはオープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)やアンソロピックのダリオ・アモデイCEOらが、バイオセキュリティーの迅速な強化を米議会に求める書簡を出した。AIがウイルス学者を超える能力を持ち、「生物兵器」をつくるための障壁がなくなりつつあるとしていた。
論文はサイエンス誌のウェブサイトで公表されている。



