アウトラインフォントの歴史:IKARUSからOpenTypeまで、デジタルフォントの進化を解説
アウトラインフォントの歴史と進化を解説

コンピュータのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)では、文字の大きさや形状を自在に変更できる「フォント」が不可欠です。現在、この目的で広く使われているのが「アウトラインフォント」です。本記事では、デジタルフォントの基礎から、アウトラインフォントの開発史、そして現在の標準形式であるOpenTypeに至るまでの進化を詳しく解説します。

デジタルフォントの登場と基本分類

コンピュータ発達の初期には、文字表示は端末のプリンタで活字を紙に転写する方式が一般的でした。その後、CRT(ブラウン管)を使う「グラスターミナル」が登場すると、文字はデジタル化された情報として扱われるようになり、これを「デジタルフォント」と呼びます。この言葉の登場により、従来の活字などデジタル化されていないフォントは、レトロニムとして「アナログフォント」と呼ばれることもあります。

デジタルフォントは、大きく「ラスターフォント」と「ベクトルフォント」に分類されます。ラスターフォントは、ビットマップデータとして文字を表現するもので、ビットマップフォントとも呼ばれます。初期のデジタルフォントは、ラスタースキャンディスプレイの登場により、この形式が使われました。

ベクトルフォントとアウトラインフォントの登場

ベクトルフォントは、直線や曲線で文字を表現する方式です。その中には、線のみで文字を表現する「ストロークフォント」と、直線・曲線・塗りつぶしを組み合わせて文字をリアルに表現する「アウトラインフォント」があります。ストロークフォントは、ベクターディスプレイで使われたほか、簡易にサイズ変更ができるフォントとしてラスタースキャンディスプレイでも利用されました。

多くのコンピュータディスプレイは、CRTの走査線に合わせてメモリを読み出し表示するため、最終的にはどのフォントもビットマップとしてビデオメモリに書き込まれます。このフォントデータからビットマップを生成する操作を「ラスタライズ」と呼びます。

アウトラインフォントの歴史:IKARUSからOpenTypeへ

アウトラインフォントの歴史は、1972年にドイツのURW社でピーター・カロー(Peter Karow)が開発した「IKARUS」に始まります。当初は、アナログフォントをデジタイザで数値化してフォントデータを作成しました。その後、IKARUSのデータ形式(IK)やフォントデザインプログラムは、デジタルフォント作成の標準として広く使われるようになりました。

次に登場したのは、1977年の「METAFONT」です。開発者はドナルド・クヌースで、書籍のフォントやレイアウトに不満を持ったことが開発のきっかけとされています。METAFONTは高品質なフォントを生成できましたが、ペンの形状を定義し、プログラムで操作する方式だったため、コンピュータに不慣れなフォントデザイナーには扱いが難しく、普及には至りませんでした。

その後、Adobeが「PostScriptフォント」を発表しました。これにはType 1とType 3の2種類があり、Type 1では「ヒント」データを利用できました。ヒントは、小さい文字のラスタライズ時に文字がつぶれるのを防ぐための情報です。

PCの表示能力が向上し、Windowsなどでもアウトラインフォントが必要になると、Adobe、Apple、Microsoftは協力してPostScriptプリンタやフォントをサポートしましたが、AdobeがType 1フォントの開発を他社に開放しなかったため、AppleとMicrosoftは独自のアウトラインフォントシステムを開発しました。最初に登場したのは、Appleが中心となった「TrueType」で、1989年に発表されました。TrueTypeはWindowsとmacOSの標準フォントシステムとなり、ラスタライザーはOS側に組み込まれました。

その後、AppleはTrueTypeを強化しましたが、Microsoftは1997年にAdobeと和解し、TrueTypeとType 1の両方を扱える「OpenType」を開発しました。以後、OpenTypeは標準的なアウトラインフォントシステムとして普及し、現在も可変フォントの実装など開発が続いています。そのため、Windows 11の「設定」の「個人用設定」にある「フォント」ページは、随時改良されています。フォントは、この設定ページからのインストールに加え、Microsoftストアやwingetでも検索・インストールが可能です。

余談:SFに登場するSETI

今回のタイトルネタは、ジャック・ウィリアムスン(Jack Williamson)の「プロジェクト・ライフライン」(ハヤカワ文庫SF)です。原題は『BRIGHT NEW UNIVERSE』で、1967年の作品ですが、SETI(地球外知的生命体探査)が重要な要素となっています。実際のSETI活動としては、1960年のオズマ計画が最初とされています。本作は、少し捻ったファーストコンタクト物として知られています。