「カードを売っているのではなく、メンバーシップを売っている」――。アメックスの記者説明会で繰り返された言葉が、どうにも腑に落ちなかった。
説明を最後まで聞いても、その意味はすっきり理解できない。お金を払えば誰でも入れる会員制は、サブスクと何が違うのか。説明した担当者に聞いても、すっきりした答えは返ってこない。説明会後のランチ懇親会でコース料理の皿を食べながら、その答えを考え続けた。その謎である。
「決済の会社ではない」というカード会社
8月5日、虎ノ門ヒルズの51階に上がった。アンダーズ東京。ハイアットのライフスタイルブランド「アンダーズ」の日本1号として2014年に開業したホテルで、会場は「シェフズスタジオ」という名の宴会場だ。
天井の高い部屋の全面窓から夏の東京の空が広がり、木製のキャビネットにはワイングラスが整然と並ぶ。聞けばこのホテルは、アメックスが世界の高級ホテル約1800軒を選んだ「ファイン・ホテル・アンド・リゾート」の一つでもあるという。つまり会場からして、すでにメンバーシップの世界観である。
この日の記者説明会のテーマは、新商品でも決算でもなく「メンバーシップモデル」。7月に発表したプラチナ・カード更新の手前にある、根本的な考え方を説明したいという趣旨の会だ。テーマは新商品でも決算でもなく「メンバーシップモデル」。このときの私は、この言葉にここまで悩まされるとは思っていない(筆者撮影、以下同)。
静かなバナーの前に立った水野直入・カード事業部長上席執行役員は、まずこう切り出した。「私たちはカードを提供しているのではなくて、メンバーシップを提供している」。
スライドの図では、中心に決済・会費・金融サービス。その周りをトラベル、ダイニング、ラウンジといった体験が隣に並んで囲み、外側からコンシェルジュなどの人によるサービスが支える。会員だからこそ得られる体験の集合体。それがアメックスのいうメンバーシップらしい。
メンバーシップモデルの仕組み
丁寧に説明してもらったのだが、飲み込みの悪い私はこの時点でまだ腑に落ちていない。
きれいな図だ。ただ、聞きながら引っかかっていた。メンバーシップという言葉は最近、どこのカード会社からも聞く。ポイント経済圏だって、広い意味では会員囲い込みだ。アメックスのそれは、何が違うのだろう。
そこで疑問で手を挙げて、少し意地悪な質問をぶつけてみた。メンバーシップを大切にするからこそ、あえてやらないことは何ですか。逆に、普通の決済会社ならやらないのに、メンバーシップを重視する会社だからこそやっていることは何ですか。
水野氏の答えはこうだった。「決済の基本機能はきちんと提供した上で、アメックスのカードを持っていてよかったと思っていただきたい」「メンバーシップだから提供していないもの、というのはあまりないと思います」。要するに、決済は普通に全部やるし、やらないことも特にない、という答えである。
会員制と聞けば、入り口の審査や閉じた空間を想像する。だがアメックスのカードは、審査はあるものの、申し込み自体は誰でもできる。扉は開いていて、やらないことも特にない。それでメンバーシップとは、どういうことなのだろう。謎が解けないまま、昼食の時間になった。
最近のラグジュアリーの会員制は「強き扉」
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