エリック・シュミットの祝辞にブーイング、AI不安が卒業式を揺るがす
エリック・シュミットの祝辞にブーイング、AI不安が卒業式を

2026年5月から6月にかけてのアメリカの卒業式シーズンで、異例の光景が相次いだ。アリゾナ大学の卒業式に招かれたグーグル元CEOエリック・シュミット氏が祝辞を述べた際、学生たちからブーイングが起こり、会場が騒然となった。AIの急速な発展に対する若者の不安が、伝統的な卒業式の場で表面化した形だ。

「AIネイティブ」世代の複雑な心情

2026年の卒業生は、大学生活のすべてを生成AIと共に歩んだ最初の「AIネイティブ」世代である。しかし皮肉にも、彼らはAIと共に歩む自分たちの未来に、決して楽観的ではない。今年4月のギャラップ調査によれば、14〜29歳の若者の82%が、AIがもたらす悪影響に懸念を示している。YouGovとエコノミスト誌の調査でも、米国人全体の71%が「AIの開発速度は速すぎる」と感じている。

通常なら新しいテクノロジーに最も熱狂するはずの若い世代が、逆にAIへの強い不安を抱えている。ここに、いまという時代の逆説がある。彼らの不安は今年、全米各地の卒業式で鮮明に表れた。

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シュミット氏へのブーイングの背景

アリゾナ大学の卒業式で、シュミット氏が登壇した瞬間から会場はざわつき始めた。祝辞の内容がAIの可能性を称賛するものであったため、学生たちの間で不満が高まり、途中からブーイングが止まらなくなった。一部の学生は「AIは私たちの仕事を奪う」と叫び、式典は一時中断された。

この現象はアリゾナ大学だけにとどまらない。全米の大学で、AI関連のスピーカーが招かれた卒業式では、同様の抗議が報告されている。学生たちは、自分たちの将来がAIによって脅かされることへの怒りと不安を、卒業式という晴れの舞台で表現しているのだ。

AIと若者の未来

ベンチャーキャピタリストの京極康信氏は、本連載で「アメリカにおける政治・経済の深層と、ビジネスの未来を方向づける最新トレンド」を発信している。京極氏は、ハリウッドを襲うAIの衝撃についても言及し、エンターテインメント業界でもAIによる雇用喪失が現実のものとなりつつあると指摘する。

卒業式のブーイングは、AIに対する社会全体の不安の縮図だ。2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で語った「ハングリーであれ、愚かであれ」というメッセージが今なお語り継がれる一方で、2026年の卒業生は「AIとどう共存するか」という難しい問いを突きつけられている。

本連載では、今後もアメリカの最新動向を伝えていく。次回は、AIが変える雇用市場の実態に迫る予定だ。

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