エグゼクティブ・コーチで否定しない専門家の林健太郎氏は、著書『否定しない言い換え事典』(フォレスト出版)の中で、日常会話で相手を否定せずに意見の違いを乗り越える方法を紹介している。林氏によれば、アメリカの著名な心理学者ジョン・ゴットマン博士の調査により、「成人同士の会話のおよそ69%には明確な正解がない」ことが示されている。このデータを踏まえ、林氏は「否定をせず、相手の意見を尊重する姿勢を見せることが大切」と強調する。
「いやいや、それは……」と言いたい時に
気心の知れた仲間とのカジュアルな席や、役職を外した会社の集まりで、相手が自分の価値観と異なる主張をしたとき、つい「いやいや、それは絶対におかしいでしょ!」と否定してしまいがちだ。しかし、林氏はこれをNGワードとし、代わりに「自分はそう思わないけど、いろんな考え方があるよね」と言い換えることを提案する。これにより、相手の意見を否定せずに自分の立場を伝えられる。
驚いたりイラッとしたりしたときの第一声
林氏は、相手の意見に驚いたりイラッとしたりしたときの第一声として「は?」を使うのは避けるべきだと指摘する。「は?」は強い否定や敵意を含むため、会話を悪化させる。代わりに「へぇ」という一言を推奨する。「へぇ」は驚きや関心を示しつつ、相手を否定しないため、会話を穏やかに進められる。
「は?」と言った後の仕切り直し
もしすでに「は?」と言ってしまった場合でも、林氏は仕切り直しが可能だと説明する。例えば、「は?……あ、いや、驚いたけど、そういう考え方もあるんだね」と、否定ではなく理解を示す言葉を続けることで、会話を軌道修正できる。重要なのは、一度発した言葉に固執せず、柔軟に対応することだ。
明確な正解がない会話の生産性
ゴットマン博士のデータは、子育ての方針や企業の経営戦略など、現実世界の約7割の話題に明確な正解がないことを示している。林氏は「正解がない話題で正しさを競うことは、会話を壊す可能性が高い」と警鐘を鳴らす。むしろ、「見解の承認」――相手の意見を尊重する姿勢が重要だという。実際、大成功するアイデアは会議で反対意見の集中砲火を浴びることが多く、「間違いとも言い切れない」という視点が有用だと述べている。
林健太郎氏は、否定しない専門家として、日々のコミュニケーションで「否定しない言い換え」を実践することで、人間関係が劇的に改善すると説く。本書では、さまざまなシチュエーションでの言い換え例が紹介されている。



