就活生の半数以上がAIを活用、LLMがキャリア相談の主役に
採用・HRの業界で、じわじわと語られ始めている問題意識がある。就活生、それも優秀な層ほど、キャリア相談をLLM(大規模言語モデル)にするようになった。その結果、Web上での露出が減り、LLM対策をしていない企業は、学生から「見つけてもらえなく」なってきている——というものだ。「マーケティングの世界で言われ始めたLLMOが、いよいよ採用にも効いてくる」と言い換えてもよいだろう。
きっかけとして語られるのは、こんな現場の声である。ある企業で、ゴールデンウイーク明けの2028年新卒向けサマーインターンのエントリーが、例年の半数に落ち込んだ。社内で振り返ると、前年(27年)新卒の面接アンケートで「半数がLLMを利用して就活をしている」という結果が出ていた。そこで複数のLLMに自社が属する業界とおすすめ企業を尋ねてみたところ、自社がまったく出てこなかった。背景には広報費の削減があり、Web上での露出が減っていることが効いていた——という話であった。
LLMOとは何か?SEOとの違いを理解する
LLMO(Large Language Model Optimization)とは、ChatGPTやGemini、Perplexityといった生成AIに自社の情報を引用・推薦してもらうための一連の最適化施策を指す。SEOが「検索エンジンに見つけてもらう」ための施策だったのに対し、LLMOは「AIに答えの中で言及してもらう」ための施策だと考えると分かりやすいだろう。
「採用にもLLMOが必要」と一言でまとめるとキャッチーだが、単純化する前に背後にある構造を見ておく価値がある。実際、就活におけるAI利用は、すでに無視できない水準に達しているからだ。
就活生の3人に2人がAI利用、Z世代の約7割は使わないという二極化
まず数字を抑えておこう。2026年卒の就活生では、3人に2人が就職活動でAIを使っているという調査結果が出ている(マイナビ調べ)。学情による調査でも、就活準備で生成AIを「使ったことがある」学生は4割にのぼっていた。
一方で、Z世代の約7割は就職・転職活動で生成AIを「使わない」とする調査結果もある。利用は急速に広がりつつも、まだ二極化の途上にある、と見るのが正確だろう。それでも、就活生の相当数がすでにAIを「相談相手」として使い始めていることは間違いない。
なぜここまで広がったのか?構造的な「相談相手の不在」が背景に
なぜここまで広がったのか。背景には、就活生にとって「まともの相談相手がいない」という構造的な問題がある。
理想を言えば、相談相手は学校のキャリア支援センターだ。ただ、複数の大学を回って見ていると、そのばらつきは非常に大きくなっている。学生にしっかり寄り添われているところもあれば、オンライン面談予約を導入した結果、エントリーシートや面接対策で職員が逼迫しきっている大学もある。就活間近にならないと存在を認知されない大学や、「自立を重んじる」という理由でそもそも就職課がない大学すらある。
同じ大学の同期との情報交換も理想ではあるが、これも上昇志向のある層でなければあまり機能しない。そこに外部に相談が流れていくこと自体は、一定程度やむを得ないことだ。問題は、その外部の相談相手にも当てはずれが多い点にある。
人材紹介会社の二極化とキャリア相談の質の低下
新卒向けの人材紹介会社は、マーケティングの巧妙さで利用が当たり前になりつつあるが、大きく2パターンに分かれる。新卒就活に特化したデータベースを持つところと、第二新卒支援のデータベースを持つところだ。後者は総合職や営業の求人が中心で、同じ企業名でも前者なら技術職が、後者では街の携帯電話販売がまず出てくる、といったことが起こる。どのバナーをクリックしたかでキャリアの入り口が変わってしまうのだ。
しかも、前者の紹介会社も2024~25年あたりから様子が変わってきた。マーケティングコストをかけすぎた反動で、紹介フィーが高く決裁の出やすいコンサルや一部SIerに絞るようになり、1day選考で内定まで出すSESや派遣会社にも積極的に誘導するケースが目立つ。Xなどで「キャリア相談」を掲げるアカウントも、その多くは実質的にアフィリエイト目的で、働いた経験すら怪しいものが少なくない。
LLMが「相談相手の不在」を埋める存在に
こうした「相談相手の不在」を埋める存在として、LLMが浮上してきたわけだ。いつ呼び出しても回答し、一見フラットに見える——就活生がLLMに流れるのは、ある意味で自然な帰結と言えるだろう。
採用環境そのものも変化している。IT人材の過半数が「管理職になりたくない」という調査結果(レバテック調べ)に見られるように、労働市場の構造が変わる中で、企業はLLMに自社を認知してもらうための対策を急ぐ必要に迫られている。



