キオクシアは、生成AIによるインフラ構築の波が「一生に一度と言えるほど、大きな変革」だと述べ、次世代AIインフラの実現に向けた最新技術・製品説明会を開催した。同社SSD事業部技術担当部長の茂田誠氏は、このように語った。
コンサルティングファームである米McKinseyの調査によると、世界のデータセンターへの投資額は2030年までに約7兆ドル(約1111兆円)に達する見通しだ。その巨大な市場において、キオクシアは自社のフラッシュメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)を、従来の「データの保管場所」としてだけでなく「メインメモリの拡張」や「AI推論の高速化を支えるデバイス」として活用しようとしている。
「一生に一度」の変革期を商機に変えるキオクシアの次の一手
キオクシアは東芝のメモリ事業を前身とする半導体メーカーだ。東芝時代には「NAND型フラッシュメモリ」を発明した。
同社は、生成AIの急速な普及に伴うデータセンター需要に対応するため、次世代メモリとSSDの製品戦略を発表した。AIインフラ市場の拡大を取り込むため、同社が打ち出した戦略の一部を紹介する。
DRAM不足に対応するフラッシュメモリの活用
供給が限られるDRAM(メインメモリを担う半導体メモリの一種)に対し、独自のフラッシュメモリ「XL-FLASH」と専用コントローラを組み合わせた「CXLメモリモジュール」を開発。DRAMを減らしてその分CXLメモリモジュールで容量を増やした場合、DRAMのみでメインメモリを構成する場合と比べて、同等コストでメモリ容量を2倍、性能を1.3倍に高められるとしている。
「推論時代」を支えるSSD
「LLMをいかに推論処理に有効に使うか」に注目が集まっている。推論処理では、GPU上で動作するAIモデルがトークンを処理することによって回答や予測などを生成する。同社は、生成AIによる大量のトークン生成が行われる場になるという意味で、データセンターが「トークン工場」へ変化すると見ている。これを見越して、GPUの利用効率を高めるSSDなどを投入する。
記者からの質疑応答では、競合他社との差別化や米NVIDIAとの連携について、同社幹部が語る一幕があった。
「AI市場の中心が『学習』から『推論』へシフトする中、最も収益貢献を期待している領域を教えてください」との質問に対し、茂田氏は「推論処理にどれだけ当社のソリューションを提供できるかが収益の鍵だと考えています。推論向けSSDで扱うAIデータ量の伸びは非常に大きいです。この領域に強みを持つ製品を主力として投入する一方、他の分野にも引き続き注力していきます」と述べた。
「競合他社と比較した際のキオクシアの強みと、今後の勝ち筋をどう考えていますか」との質問には、メモリ事業部技術担当部長の小野寺誠氏が「当社はフラッシュメモリを発明した会社であり、3次元フラッシュメモリでも、いち早くコンセプトを発表するなど、技術面で先行してきました。独自の製造技術によって高い信頼性と性能を両立していることが強みです。また、三重県の四日市工場と岩手県の北上工場における生産効率の高さは、他社を大きく上回っていると自負しています。技術力と生産効率、この2つが今後も競争力を維持していくための大きな力だと考えています」と語った。
「NVIDIAが提唱するAI推論向けの新たなストレージ構想『コンテキスト メモリ ストレージ』(CMX)への対応について、競合と比べてどのように見ていますか」との質問に対し、茂田氏は「市場規模が非常に大きいため競合の参入は当然考えられます。ただ、当社はNVIDIAと緊密に連携しており、同社のキープレイヤーとも話をする機会がある。後れを取っている感覚はありません」と述べた。



