トヨタ自動車と日産自動車が、電気自動車(EV)向け半導体の共同開発で基本合意したことが、複数の関係者への取材で明らかになった。両社は2025年内にも合弁会社を設立し、EVの心臓部となるパワー半導体や、自動運転に必要な高性能プロセッサーの国産化を目指す。経済産業省も、半導体の安定調達を重要課題と位置づけ、補助金などで支援する方針だ。
背景:EVシフトで半導体需要が急増
世界的なEVシフトの加速に伴い、車載半導体の需要は急拡大している。従来のガソリン車に比べ、EVは使用する半導体の数が約2倍に増加。特に、電力制御に使われるパワー半導体や、自動運転の判断を担うAIチップの需要が高まっている。しかし、日本メーカーはこれらの先端半導体の多くを海外、特に台湾のTSMCなどに依存しており、地政学リスクや供給途絶の懸念が強まっていた。
トヨタと日産は、2021年からの世界的な半導体不足で生産調整を余儀なくされた苦い経験を持つ。今回の共同開発は、そうした供給リスクを低減し、競争力を強化する狙いがある。
合弁会社の概要と開発対象
関係者によると、トヨタと日産は新会社の出資比率を50%ずつとし、資本金は数百億円規模を見込む。開発の中心となるのは、次世代のパワー半導体材料として注目される「炭化ケイ素(SiC)」を用いたチップだ。SiCは従来のシリコンに比べ、電力ロスが少なく、高温動作に耐えられるため、EVの航続距離延長に貢献する。
また、自動運転レベル4以上の実現に必要な、画像認識や判断処理を行うAIアクセラレーターの開発も視野に入れる。これらは、車両の頭脳として機能する重要な部品であり、両社は共通のプラットフォームを採用することで開発コストの削減を図る。
経済産業省の支援と産業界への影響
経済産業省は、自動車産業の競争力維持には半導体の安定調達が不可欠として、今回の取り組みを「戦略的パートナーシップ」と評価。2025年度の補正予算に、関連する研究開発費や設備投資への補助金を盛り込む方向で調整している。補助額は総額で1000億円を超える可能性もある。
業界関係者は「トヨタと日産が手を組むのは異例であり、それだけ危機感が強い証拠」と指摘する。一方、ホンダやスバルなど他メーカーへの波及効果も期待される。ただ、共同開発の成果が実車に搭載されるのは、早くても2020年代後半になる見通しで、当面は海外サプライヤーへの依存が続く。
今後の課題と展望
両社は、開発した半導体の生産を、国内の既存工場を活用する方向で検討している。しかし、先端半導体の製造には巨額の投資が必要で、歩留まり向上が課題となる。また、競合関係にある両社が、どこまで技術情報を共有できるかも不透明だ。
トヨタと日産は、共同開発の範囲やスケジュールを年内にも正式発表する予定。日本の自動車産業が半導体の「国産化」にどこまで踏み込めるか、注目が集まる。



