近年、「ソブリンAI」という言葉が頻繁に目につくようになった。これは、国家や企業が自前のインフラとデータで独立運用するAIを指す概念だ。外部クラウドや国外事業者に過度に依存せず、自国・自社の主権の下でAIを開発・運用することがポイントで、例えば国家の重要な機密や戦略に関わる情報を国外のデータセンターやシステムにさらけ出すわけにはいかない、という考え方に基づく。
日本国内でもこの重要性が認識されており、日本独自のAI基盤モデルを構築する必要があるとされる。基本的な方針は日本政府が考えることだが、事業化には民間企業が中心となるべきで、世界における日本の強みや特徴を主張するためにも「官民一体」となった体制が求められる。
ソフトバンクグループへの期待と懸念
ここで注目されるのがソフトバンクグループだ。同グループを率いる孫正義氏はAIの事業化に極めて積極的であり、日本のソブリンAIを担える唯一の存在と筆者は期待している。同氏ほどの資金力と行動力を備えた経営者は日本にはほかに存在しないだろう。
しかし、同時に懸念材料も存在する。AIの実現には半導体が不可欠だが、同氏の半導体に対する認識には疑問符がつく。英アームをめぐる動向がその理由だ。
アーム買収の称賛と近年の顧客対応
ソフトバンクがアームを買収したのは2016年。買収総額の240億ポンド(当時約3.3兆円)は、日本企業による企業買収として過去最高であった。世界中の半導体メーカーが顧客であり、買収は称賛された。
しかし近年、アームは顧客にけんかを売るような対応が目立つようになった。さらに、アームを脅かす存在として「RISC-V」が台頭している。こうした状況は、アームの焦燥感を浮き彫りにしている。
AI半導体クラスタとソブリンAIの課題
半導体業界では、エヌビディアに対抗する動きも見られる。負け組の「AI半導体クラスタ」でエヌビディアに対抗しようとする試みがあるが、その実効性は未知数だ。
日本のソブリンAIの実現には、こうした半導体をめぐる課題を乗り越える必要がある。孫氏の行動力と資金力に期待がかかる一方で、半導体に関する深い理解が問われている。



