世界的な半導体不足が自動車産業に深刻な打撃を与えている。トヨタ自動車は2025年まで生産調整が続く可能性があると発表し、業界全体に波紋が広がっている。半導体の供給制約は、新型コロナウイルス禍からの需要回復やデジタル化の加速により、予想以上に長期化している。
トヨタの生産調整とその背景
トヨタは2024年11月、2025年の生産計画について「半導体不足の影響が続く可能性が高い」と表明した。同社はこれまでも複数回にわたり生産調整を実施しており、2024年度の世界生産目標も下方修正している。具体的には、2024年4~9月期の生産台数が前年同期比で約5%減少した。
半導体不足は、自動車の電装化やEV(電気自動車)シフトによって需要が急増したことが主因だ。特にパワー半導体やマイコン(マイクロコントローラー)の供給が逼迫している。トヨタの広報担当者は「供給網の多様化や在庫の積み増しを進めているが、予断を許さない状況だ」とコメントしている。
業界全体への影響
半導体不足の影響はトヨタにとどまらず、日産自動車やホンダなど他の国内メーカーにも波及している。日産は2024年10月に一部工場でライン停止を実施。ホンダも生産計画の見直しを余儀なくされている。自動車部品メーカーも影響を受けており、デンソーは半導体調達のリスクを分散するため、複数のサプライヤーとの契約を強化している。
業界団体の日本自動車工業会(自工会)は、2024年度の国内自動車生産台数が前年比で約3%減少すると予測。半導体不足がなければ成長が見込めただけに、影響は大きい。自工会の幹部は「半導体の安定調達は喫緊の課題であり、政府の支援も必要だ」と訴えている。
半導体メーカーの対応と政府の動き
半導体メーカーも増産に動いている。ルネサスエレクトロニクスは2024年、車載半導体の生産能力を2023年比で約20%増強する計画を発表。しかし、新工場の立ち上げには時間がかかり、即効性は期待できない。台湾積体電路製造(TSMC)も熊本県に工場を建設中だが、本格稼働は2025年以降となる見通しだ。
日本政府は半導体産業の強化に乗り出しており、2024年度補正予算に半導体関連の支援策を盛り込んだ。経済産業省は「国内半導体サプライチェーンの強靭化を図る」としている。具体的には、先端半導体の製造拠点誘致や研究開発への補助金が柱だ。
今後の見通し
専門家の間では、半導体不足は2025年後半には緩和に向かうとの見方が多い。しかし、地政学的リスクや需要の変動によっては長期化する可能性もある。IHSマークイットのアナリストは「半導体の需給バランスが正常化するには、少なくともあと1~2年はかかるだろう」と分析している。
自動車メーカー各社は、半導体の代替調達や設計変更によるリードタイム短縮など、様々な対策を講じている。しかし、根本的な解決には至っておらず、2025年以降も生産への影響が続く可能性がある。トヨタの豊田章男会長は「半導体は自動車の心臓部であり、安定供給が不可欠だ」と強調している。



