東洋経済の新連載「写真で見る日本経済」第68回は、全国各地で進む半導体工場建設ラッシュの最前線をリポートする。世界的な半導体不足を背景に、日本でも大型投資が相次いでおり、その現場はかつてない活況を呈している。
TSMC熊本工場、建設進む
熊本県菊陽町では、台湾積体電路製造(TSMC)の工場建設が急ピッチで進んでいる。2022年4月に着工した第1工場は、2024年末の量産開始を目指しており、総投資額は約86億ドル(約1兆2000億円)に上る。同工場では、最先端の12〜28ナノメートルプロセスを採用し、車載用や民生用の半導体を生産する予定だ。
地元経済への波及効果は大きく、菊陽町の税収は2023年度に前年比約2倍の30億円超に急増。建設関連の雇用も生み出し、周辺の住宅や商業施設の需要が高まっている。一方で、交通渋滞や水道インフラの負荷増大といった課題も浮上している。
ラピダス北海道工場、2025年稼働へ
北海道千歳市では、国策半導体企業ラピダスが建設する工場の造成工事が本格化している。2023年9月に着工した第1期工事では、2025年の試作ライン稼働を目指し、総投資額は約5兆円にのぼる。ラピダスは、2ナノメートル以降の超微細プロセス技術の確立を目指しており、日本の半導体復活の象徴と位置づけられている。
千歳市では、工場関連の従業員として約1000人の新規雇用が見込まれ、周辺自治体を含めた経済効果は年間約4兆円と試算される。しかし、電力消費量が一般家庭約100万世帯分に相当するため、再生可能エネルギーの確保が課題となっている。
その他の半導体投資動向
このほか、キオクシアは四日市工場と北上工場でNAND型フラッシュメモリの生産拡大を進め、ソニーグループは長崎県の工場で画像センサーの生産能力を増強している。また、米マイクロン・テクノロジーも広島工場に約5000億円を投資し、DRAMの生産を拡大する計画だ。
経済産業省は、半導体分野の国内投資を促進するため、2021年度から2023年度までに約3兆円の補助金を計上。これにより、国内半導体生産能力は2020年比で約3倍に拡大する見通しとしている。
地域経済への影響と課題
半導体工場の建設ラッシュは、地域経済に雇用や税収増などの恩恵をもたらす一方で、インフラ整備や人材確保、環境負荷などの課題も顕在化している。特に、高度な技術を持つ人材の確保は各社共通の悩みで、熊本県ではTSMC進出に伴い、県外からの転入者が増加。住宅価格の高騰や教育環境の整備が急務となっている。
また、半導体工場は大量の水と電力を消費するため、地域の水資源や電力供給への影響が懸念される。熊本県では、地下水の保全対策として、TSMCが水源涵養林の整備などに協力する方針だ。
半導体工場建設ラッシュは、日本の産業競争力強化に寄与する一方で、持続可能な地域発展のためのバランスが問われている。東洋経済は今後も、この動きを写真とともに追い続ける。



