政府は7月14日、水素燃料電池車(FCV)の普及目標を大幅に下方修正する方針を固めた。2030年までの累計販売台数を従来の80万台から12万台に引き下げる。これは、水素ステーションなどのインフラ整備の遅れや車両価格の高止まりが主な要因とされる。
目標引き下げの背景
経済産業省がまとめた新たな水素基本戦略の中で、FCVの普及目標を現実的な水準に修正する。2017年に策定した前回の戦略では、2030年に累計80万台、水素ステーションを900カ所設置する目標を掲げていたが、2025年時点でのFCVの累計販売台数は約1万5000台にとどまっている。
「水素ステーションの整備が想定より進まず、利用者の利便性が向上しなかったことが普及の足かせとなった」と、経済産業省の担当者は説明する。水素ステーションは2025年時点で約160カ所と、目標の2割にも満たない。
新たな目標と課題
新たな目標では、2030年にFCVの累計販売台数を12万台、水素ステーションを300カ所設置する。また、水素供給量を現在の年200万トンから300万トンに増やす計画だ。
ただし、FCVの車両価格はガソリン車や電気自動車(EV)に比べて依然として高く、トヨタ自動車の「MIRAI」は約700万円からと、普及の壁となっている。政府は水素ステーションの整備補助や車両購入補助を継続する方針だが、業界からは「より抜本的なコスト削減策が必要」との声も上がる。
水素戦略の全体像
政府は水素を脱炭素社会の鍵と位置づけ、水素基本戦略を改定する。FCVの普及目標引き下げの一方で、水素発電や水素製鉄など産業分野での水素利用拡大を重視する方針だ。2030年までに水素供給コストを現在の3分の1に低減し、国際競争力を高める目標も掲げる。
「水素社会の実現には、自動車だけでなく多様な分野での水素需要を創出することが重要だ」と、専門家は指摘する。



