好きなモノをあえて手放す人が増加
フィギュアやアーティストのグッズ、高価なコレクション――本来なら手元に置いておきたい「好きなモノ」を、あえて捨てる人が増えている。東京都品川区が運営する宅配型トランクルーム「minikura(ミニクラ)」では、捨てられるモノに占める趣味系カテゴリーの割合が上昇し、直近の調査では前年を上回った。なぜ、好きなモノを家に置かない人が増えたのか。
ミニクラの仕組みと会員数の拡大
ミニクラは、2012年にスタートした宅配型トランクルームサービスだ。専用ボックスを取り寄せて荷物を詰め、集荷を依頼すれば、倉庫で保管される。月額料金は1箱あたり320円からで、申し込みから取り出しまでがWeb上で完結する。自宅にいながら手軽に「倉庫」を持てる仕組みだ。
会員数は2020年からの5年間で約1.6倍に拡大。1人当たりの保管数も伸びており、平均は約8箱となっている。要因について、ミニクラグループのリーダー鈴木啓氏は「コロナ禍の影響が大きかった」と分析する。
在宅時間の長期化と新たな趣味の発見
在宅時間が長くなって自宅の狭さを実感した人と、巣ごもり生活の中で新たな趣味を見つけ、モノが増えた人。この2つの流れが重なり、需要を押し上げたという。その後も、都市部で住居の狭小化が追い風となっている。LIFULL HOME'Sの調査(2025年)によると、首都圏の中古マンションで、問い合わせがあった物件の平均専有面積は、2020年からの5年間で約6.5平方メートル、畳4枚分ほど縮小。価格高騰を背景に、より狭い物件へ需要が移っている。
「狭小住居への関心が高まったことで、ミニクラの認知も広がり、利用してもらえるケースが増えた」と鈴木氏は説明する。部屋は狭くなる一方で、持ち物は増えていく。その受け皿として会員数を伸ばしてきたミニクラだが、ユーザー数だけでなく、捨てられるモノの「中身」も、この数年で変化している。
趣味のモノが増加する背景
ミニクラでは、保管されるモノのカテゴリー別割合を定期的に分析している。その結果、趣味系カテゴリー(フィギュア、アーティストグッズ、コレクション品など)の割合が上昇傾向にある。鈴木氏は「以前は書類や衣類などの実用品が中心でしたが、最近はコレクション目的で購入したが、部屋に置ききれなくなったモノを預けるケースが増えています」と話す。
特に、フィギュアや高価なグッズは、一度購入すれば永く手元に置くものと考えられがちだが、実際は「気に入っているが、飾る場所がない」「引っ越しを機に処分を決意した」といった声が少なくない。また、コレクションの整理を目的に、ミニクラを利用するユーザーも増えている。
なぜ好きなモノを家に置かないのか
「好きなモノ」をあえて手放す背景には、住環境の変化と価値観の多様化がある。都心部ではワンルームや1Kなどの狭小物件が増え、限られたスペースで生活する人が多い。その中で、コレクションをすべて飾ることは難しく、結果的に「保管」や「処分」を選択する。
また、ミニマリズムや断捨離の流行も影響している。不要なモノを減らし、本当に必要なモノだけに囲まれて暮らしたいという意識が広がり、コレクションも「所有する喜び」から「管理する負担」へと捉え方が変わりつつある。
鈴木氏は「今後も、好きなモノを手放すのではなく、預けるという選択肢が広がっていくのではないか」と展望を語る。ミニクラのようなトランクルームサービスは、単なる保管場所ではなく、趣味と住環境のバランスを取るためのツールとして、ますます重要性を増しそうだ。



