世界中で愛されるデニムは、身近なアイテムでありながら、希少なヴィンテージ品は数千万円で取引されることもある。作業着から高級コレクションへと変貌を遂げた背景には、何があるのか。日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム「VCM」代表の十倍直昭氏に、その魅力と市場の現在地を聞いた。
「今の技術では作れない」生地と色落ちが醍醐味
十倍氏は、ヴィンテージデニムの最大の魅力を「生地と色落ちの違い」と語る。「現行品と比べ、生地の質感や色落ちの表情に明確な差があります。現代の技術でも、当時の素材や製法、そして長い年月を経て生まれた風合いを完全に再現するのは難しい」。ワインやウイスキーの熟成に例え、「時間をかけて生まれる価値は、技術の進歩だけでは一朝一夕に作れない」と説明する。
例えば、通称「ファースト」と呼ばれるデニムジャケットは、その質感と色落ちが現行品とは一線を画す。理由として、環境基準や製造方法の変化、そして長年の着用や洗濯による経年変化が挙げられる。
スキニー全盛の「氷河期」を超え、知識がマーケットを広げた
ヴィンテージデニム市場は、1990年代に大きな古着ブームを経験。木村拓哉をはじめ著名人が着用し、認知度が向上した。しかし2000年代には、DIOR HOMMEのスキニーシルエットが主流となり、ゆとりのあるヴィンテージは一時低迷。だが2010年代後半、オーバーサイズトレンドとコロナ禍での「実物資産」としての注目が再燃した。
十倍氏は「第2次古着ブームと言われるが、むしろヴィンテージ文化が定着した結果」と分析。SNSの発展で情報へのアクセスが容易になり、「なぜ高い価値がつくのか」を理解する層が増え、市場の裾野が拡大した。現在、希少なヴィンテージデニムはコレクションピースとして世界的に評価され、高額取引の記録も話題に。
永遠の王道「501」、そして都会的な「ブラックデニム」の台頭
現在最も人気があるのは、リーバイスの「501」。そこから「505」や「517」など、時代に応じて人気モデルが広がる。リーバイスはデニムの歴史そのものと結びつき、市場の基準となっている。
近年注目を集めるのがブラックデニムだ。以前はレギュラーアイテムだったが、都会的なスタイルとの相性から人気が急上昇し、相場も大きく上昇。また、デニムの楽しみ方も変化し、ジャストサイズだけでなく、あえて大きめを選びベルトで絞るスタイルも広がっている。
さらに、「ボロ」と呼ばれるダメージやリペア跡のある個体にも価値が見出されている。以前はコンディションが重視されたが、現在はその一本だけの個性やストーリーとして評価され、若い世代を中心に人気だ。
価値を見極める「3つのポイント」
十倍氏は、リーバイスの価値を見極めるポイントとして、3つを挙げる。
- 赤タブ(ビッグE):右バックポケットの赤タブに「E」が大文字のものはヴィンテージの可能性があるが、復刻モデルにも使われるため他の要素と併せて判断が必要。
- セルビッチ(赤耳):1980年代前半までのリーバイスには、白い生地の端に赤いラインが入った「赤耳」が使われている。
- ボタン裏の刻印:「6」や「J」などの数字やアルファベットが刻印され、製造工場を判別できる。
これらのディテールから、おおよその年代や仕様を判断できる。十倍氏は「最初から高額な一本を選ぶ必要はなく、1~2万円、5万円前後でも魅力的なヴィンテージは多い。まずは気軽に手に取り、背景やストーリーも楽しんでほしい」と締めくくった。



