シャープは、2026年8月17日から28日まで、東京・丸の内の新国際ビル1階にあるGOOD DESIGN Marunouchiにおいて、「シャープデザインのまなざし展」を開催している。
「そのまなざしに、ヒミツあり。」をテーマに、シャープが発売している最新の洗濯機やテレビ、ドライヤー、トースター、掃除機を展示。モノづくりにおけるデザイナーの視点や思考プロセスを紹介するとともに、試作機やデザインに関する内部資料も展示した。
ユニークなのは、デザイナーが観察する位置や姿勢を再現する形で製品を展示している点だ。来場者は、その角度から製品を眺めることで、デザインのこだわりを知ることができる空間構成としている。
約30年ぶりのデザイン展、その背景
シャープ ブランド戦略本部総合デザインセンターの山水洋センター長は、「私自身は、インハウスのデザインとは縁の下の力持ちであり、表に出るべきものではないと考えてきた。だが、若手デザイナーから、もっと発信をしたいという要望があり、今回のデザイン展の開催に至っている」と背景を説明。「デザイナーが、どこを見て、どこまで配慮して、家電のデザインをしているのかといったことを示すことができた」と語った。
同社が製品デザインに関する展覧会を開催するのは約30年ぶりだという。シャープのデザイン組織は、本社部門の総合デザインセンターと、各事業部門に所属するデザイナーが連携し、B2C製品およびB2B製品のデザインを行っている。
2025年12月に総合デザインセンターがブランド戦略本部のなかに統合したのにあわせて、コーポレートブランド価値を高めるための体験価値創出としてデザインを位置づける動きが加速したことも、今回のデザイン展の開催につながっているという。
また、2026年6月には「SHARP DESIGN」に関するウェブサイトを開設するとともに、新たなデザインステートメントとして「志と眼差しで、世界にシャープを届ける。」を制定。2026年4月に就任した河村哲治社長CEOが「発信力の強化」を重点施策のひとつに掲げており、その方針に則ったものともいえる。
デザイン部門の活動強化と今後の展望
山水センター長は、「シャープ創業者である早川徳次氏は、『他社がまねしてくれる商品をつくれ』と語っていた。シャープに浸透しているこのDNAは、デザインにも息づいており、それがシャープらしいデザインにつながっている」とし、「だが、経営危機をきっかけにした過去10年間は、デザインに関しても挑戦する活動が少し鈍っていたという反省がある。以前は、先行的なデザインを経営層に対して提案する機会があったが、経営の近くでの活動が減っていた。2年程前から、経営との距離感が近くなり、河村社長CEOをはじめとする経営層に対して、デザインという観点から、こんなことができるという提案を積極化させている。デザイン部門の代表として、こうした活動を強化することが、シャープのブランド価値の向上に直結すると考えている」と述べた。
また、「シャープでは、『ひとの願いの、半歩先。』というコーポレートスローガンを掲げている。今回のデザイン展では、『ひとの願い』においては、情緒的な価値や心地よい変化といったことを含めて、どうデザインをしているのかという点を示した。また、製品がお客様の手に届くときには『半歩先』がいいが、未来のデザインという観点では、何歩も先に進む必要がある。今後は、そうした未来のデザインを公開する機会も設けたい」とも語った。
今回のデザイン展の企画を主導したシャープ TVシステム事業本部デザインスタジオ デザイナーの古井翔真氏は、入社7年目で、昨年まではB2B製品のデザインを担当。今年からテレビのデザインを担当している。仲間から「テレビって、どこをデザインしているのかわからない」と言われ、デザインのこだわりを広く伝えたいと思ったのが、企画を立案するきっかけだったという。
「日常的に利用される家電の場合は、機能的なデザインや使いやすいデザインの追求に注目が集まりがちだが、情緒的な価値や、哲学的な部分を含めたストーリーにも多くの時間をかけている。この部分を、実際に体感してもらいながら、伝えたいと考えた。価格や性能だけでなく、デザインの観点からもシャープの家電を知ってもらうことで、見方が変わることを期待している。また、これまではデザインについて、お客様の声を聞く機会がなかった。デザイン展を通じて、フィードバックをいただくことも期待している」と述べた。
展示された5製品のデザインのこだわり
今回のデザイン展に展示された5つの家電製品のこだわりや工夫を、デザイナーの視点や着眼点を通じて見てみる。それぞれのデザインについて、古井氏が説明を行った。
洗濯機では、プラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機「ES-8XS1」を展示。「家具のように空間におさまる洗濯機」を目指したデザインを採用しているという。「洗濯機は、パネルを操作したり、洗濯物を出し入れしたりといったように近寄って使うことが多く、そこにデザインの工夫を凝らすことが多い。だが、それだけでなく、2、3歩離れた場所から、ランドリー空間全体として見たときのおさまりを考慮した」という。水平垂直の線を生かした家具調のフォルムを採用。上部に天板が1枚乗っているようなデザインとしたのも家具のデザインを意識したものだという。また、洗濯機の筐体には鋼板を使用。光の当たり具合によって色合いが変化するように工夫した。
テレビでは、量子ドット/mini LEDテレビ「4T-65X9A」を展示。「映像だけに没入できるように、画面以外のノイズレスを追求した」という。こだわったのがスピーカーで、画面下部から見える大きなスピーカーを見えないように配置するだけでなく、リフレクター機構の採用により、隠れたスピーカーの音を前方へクリアに届けることができるように工夫している。サイドのフレームは、シルバーを採用しながらも、背面や側面の壁の色を取り込み反射する仕組みとし、フレーム色と壁の色が同化し、テレビ自体の存在感がなくなるようにした。
ドライヤーでは、プラズマクラスタードレープフロードライヤー「IB-WX901」を展示。「独自の送風技術を優しく伝える」というコンセプトでデザインしたものだ。この製品は、「ドレープフロー X4」と呼ぶ4カ所から風が噴き出る設計としており、それぞれの吹き出し口には角がない「スーパー楕円」を大小2つずつ重ね、片方の楕円を90度回転させることで生まれる隙間を吹き出し口としている。ハンドルの断面形状も「スーパー楕円」で設計している。
トースターでは、ウォーターオーブントースター「AX-WT1」を展示。「パンを焼いてくれる相棒のような存在感」を目指したという。前面にある大きなトラック楕円の窓は、潜水艦や飛行機、新幹線の窓を思わせる形状であり、デザイナーが幼少期にトースターの窓を覗き込んでいた原体験をもとにデザインしたものだという。脚は傾斜のついた「ハ」の字型とし、踏ん張ってパンを焼いている生き物のようで温かみがあるたたずまいを実現したという。
掃除機では、ステーションタイプコードレススティック掃除機「EC-CR1」を展示。「生活に寄り添う道具のようなたたずまいを追求」したデザインを採用している。本体を縦に走る溝とステーション本体が一体となった水平垂直の構成とし、壁際に置かれた家具のようなたたずまいをみせることに成功。掃除機のごみをステーションに吸い上げるためのモーターは掃除機本体のものを使用する新たな技術を採用することでスリム化を実現した。本体は削ったように平らな面とし、家具と家具の隙間などに入りやすくしている。
「シャープデザインのまなざし展」の入場は無料で、予約は不要。期間中は無休で、開場時間は午前11時から午後8時まで。会期中に約3000人の来場を見込んでいる。



