量子化学計算で世界最速を達成したMOVER
NVIDIAの最新GPU「H100」を搭載したスーパーコンピュータ「MOVER」が、量子化学計算のベンチマークで世界最速の性能を記録した。この成果は、東京工業大学とNVIDIAの共同研究チームによって発表された。
MOVERは、NVIDIAのH100 GPUを256基搭載し、理論演算性能は約2.5ペタフロップスに達する。量子化学計算のベンチマークでは、従来のスーパーコンピュータと比較して約2倍の高速化を実現。特に、分子の電子状態を高精度に計算する「結合クラスター法」において顕著な性能向上が見られた。
創薬や材料開発への貢献
この高速化により、従来は数週間から数ヶ月かかっていた大規模な量子化学計算が、数日から数時間で完了できるようになる。研究チームのリーダーである東京工業大学の田中教授は、「MOVERの性能は、創薬や新材料の開発に革命をもたらす可能性がある」と述べている。
具体的には、タンパク質と薬剤の相互作用のシミュレーションや、新しい触媒材料の探索など、実用的な応用が期待されている。また、量子コンピュータの開発にも貢献する可能性があるという。
H100 GPUの性能を最大限に活用
MOVERは、NVIDIAのH100 GPUを最大限に活用するために、独自の並列化技術を採用している。これにより、GPUのメモリ帯域幅や演算ユニットを効率的に使用し、高い計算効率を実現している。
NVIDIAの担当者によると、「MOVERは、H100の性能を最大限に引き出すための最適化が施されており、今後のスーパーコンピュータの設計に重要な指針を与える」とコメントしている。
今後の展開
研究チームは、MOVERの性能をさらに向上させるため、ソフトウェアの最適化を進めるとともに、より大規模なシステムへの拡張を検討している。また、量子化学計算以外の分野への応用も視野に入れており、気候変動シミュレーションや宇宙物理学など、幅広い科学計算への活用が期待されている。
この成果は、7月4日に開催された国際会議「高性能計算化学会議」で発表された。



