MicrosoftのAIセキュリティ新戦略「Project Perception」とMDASHの全貌:脆弱性を先回りし次世代の防御
Microsoft「Project Perception」とMDASHの全貌

Microsoftは2026年7月中にも、AIを活用した新たなセキュリティ対策ツール「Project Perception」の提供を計画している。The Informationの報道によれば、これは同社のセキュリティ担当EVPに就任したHayete Gallot氏が主導するプロジェクトで、特に企業のITシステムにおける脆弱性の発見に特化したAIセキュリティ製品の開発を推進している。

MDASHとProject Perceptionの関係

Project Perceptionの技術コアとなっているのが「MDASH(Multi Model Agentic Scanning Harness)」だ。MDASHはもともとMicrosoft内部での自社製品のセキュリティ対策に活用されていた技術で、5月に公開された。Project PerceptionではこのMDASHをベースに、Microsoft DefenderやGitHub Code Securityといった既存製品にも最新AIを組み込んでいく。

MDASHの動作プロセスは、一連の脆弱性(バグ)検証が「パイプライン」に沿って実行される。検証対象のコードをパイプラインに通すと、まずコードの分析から検証に適切なAIエージェントが100以上の候補から複数選ばれる。その後、検証フェーズに入り、選出されたAIエージェントによる多角的な分析が行われ、攻撃の可能性に関するエージェント間での議論や、実際に攻撃を行うコードを作成するPoC(Proof of Concept)が実施され、最終的に誤検知(ノイズ)を除去した結果がレポートされる。

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MDASHの実行パイプラインとコスト課題

従来のセキュリティ検証ツールの問題点は、大量の「ノイズ」がレポートとして報告されることで検証を難しくする点にあった。MDASHの利点の1つはこの精度を高めたことにある。しかし、MDASHは非常に強力な反面、100以上の専門AIエージェントを稼働させて検証を行うため、運用負荷(コスト)が重く、一般提供には費用対効果の面で厳しいという課題がある。

そこでProject Perceptionでは「モデルルーター」と呼ばれる仕組みを採用し、高度な検証が必要な局面では複数の「フロンティア」AIモデル(Opus、GPTなど)を呼び出し、定型処理などにはより動作の軽い「蒸留モデル(Distilled Model)」を割り当てることで全体の運用コストを下げる点が特徴だ。

既存製品との連携とAnthropicとの違い

さらに、Project PerceptionではMDASHでの脆弱性レポートの出力に留まらず、Microsoft DefenderやGitHub Code Securityと連携し、これらの製品のダッシュボードへの自動登録を行う。同時に開発者側の修正ワークフローに反映させる仕組みを備えており、企業のIT管理者がより扱いやすい形に整理されている。

このようにMicrosoftのセキュリティ製品との連携を強化し、複数のAIモデルを適宜組み合わせて低コスト運用を可能にしつつ、高い検証精度を実現するというのが、単一モデルで動作して販売性を重視したAnthropicの「Project Glasswing」との違いと言える。

Microsoft内部での成果と今後の展望

なお、このMDASHやProject PerceptionをMicrosoft社内で活用した成果が既に現れているのではないかとの指摘がある。Windows Latestのまとめによると、7月のセキュリティパッチ(Patch Tuesday)での修正数が570と、前年比で約4倍、前月比でも3倍超と急増している(集計方法により数字が異なる点に注意)。

Microsoft公式でも言及があり、同社自身がAI活用でWindowsのセキュリティ対策が大きく進展していることに触れており、攻撃者との「バトル」は既に別のステージへと移りつつあることがうかがえる。サードパーティ製ウイルス対策は不要? 企業システムに潜む真の「根」とは、今後の議論が必要だろう。

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