長引いた梅雨の後に突然訪れた猛暑が続いている。気象庁は連日「危険な暑さ」を警告するが、自身の経験がなければ回避行動に結びつかない。筆者の自宅エアコンが突然故障し、冷気を発しない状態となり、ハードウェアの寿命について厳しい現実を思い知らされた。
「正常化バイアス」に支配される私たち
地球温暖化と現在の気候状況の関連性については議論が分かれるが、「年々暑くなっている」という傾向は多くの人が実感している。今年欧州を襲った熱波は数千人の死者をもたらした。欧州では堅牢な家が100年以上受け継がれ、エアコンの設置が容易でないため、温暖化に対する意識が政治的なアジェンダを超えて深刻なレベルに達しているという。
日本でも政府は今年の夏の異常性について警告を発してきた。例えば「エアコンの2027年問題」はニュースで取り上げられ、啓蒙活動が進められてきたが、実際に故障するまで何もしないのは一般人の常である。予期せぬ危機に直面した際、「自分は大丈夫」と危険を過小評価する「正常化バイアス」に陥っていた自分自身に落胆する。
酷暑の中でエアコンが故障する恐怖
筆者の自宅には5台のエアコンが設置されている。5月に動作確認をしたが、酷暑4日目で1台が送風はするものの冷気が出ない不具合を起こした。昨年も同じエアコンが不具合を起こし、冷媒ガスの再注入で切り抜けたが、その際サポート要員は「今年の夏は温度が異常に上がり過ぎて、本来の製品スペックでは許容できない範囲に至った」と説明した。同様の事例が増えており、製品開発部にもフィードバックされているという。
昨年の経験があったにもかかわらず、今年も同じ問題が発生したことに、「この夏までに時間があったのに」という後悔と、ハードウェアには寿命があるという現実を理解していなかった自分にがっかりした。30年以上半導体販売に関わってきた自身を考え、忸怩たる思いを持った。
エアコンの寿命と日本家電ブランドの保守体制
エアコンの製品寿命は約10年という。自宅のエアコンの製造年を調べたところ、5台中4台が10年以上前の製造だった。特に15歳を超えた老愛犬が2匹いるため、命を守らなければという思いが募った。
幸い、自宅のエアコンは10年前から同一の大手ブランドに統一している。カスタマーサポートの個人ページは当初懐疑的だったが、頼もしい存在となった。型番を登録した個人ページでのやり取りはスムースで、問題発生から半日でサポート要員派遣の日時が決まった。電話での不毛なやり取りはなく、日時が決まったが、その日取りは1カ月先の8月中旬だった。
筆者は外資系半導体企業を渡り歩いてきた経験から、日本メーカーブランドに対して「過剰品質」などの感想を持つことが多いが、商品保守体制は今やブランド価値の大きな部分を占めていると実感した。
半導体業界でも保守・サービスの売り上げが伸びている。ASMLの2026年第2四半期売上高93億2600万ユーロのうち、27億6200万ユーロをInstalled Base Managementの売上高としている。Applied Materialsの2026年度第2四半期も、保守・サービス部門の売上高が16億6500万ドルと全体の2割を超えるなど、保守・サービス事業の売り上げを伸ばす企業が多々ある。
残りの4台がこの夏を乗り越えられることを祈りつつ、「あなたの家のエアコンは大丈夫ですか?」などと言う余計なことを考えてしまうトラブルであった。



