日本では補聴器の普及率が15.6%にとどまる一方、耳をふさがない「集音器」市場が急速に拡大している。集音器は周囲の音を大きく聞こえやすくするオーディオ機器で、補聴器と異なり第三者認証機関による認証が不要なため、参入障壁が低い。WHOは2050年までに世界の4人に1人(約25億人)が何らかの難聴を抱えると警告しており、この需要に応える形で大手企業が続々と市場に参入している。
NTTソノリティ「cocoe Ear」がクラウドファンディングで2億5000万円超
音響技術に強みを持つNTTソノリティ(東京都新宿区)は、「聞こえ」の課題に着目した新ブランド「cocoe(ココエ)」から、オープンイヤー型集音器「cocoe Ear(ココエイヤー)」3機種を発売した。価格は各3万9600円。2025年12月に実施したクラウドファンディングでは支援総額が2億5000万円を超え、6月18日からはドコモショップや家電量販店、自社ECストアなどで一般販売を開始した。
cocoe Earは耳をふさがない設計で、周囲の音を自然に聞き取りながら会話を補助する。NTTソノリティの担当者は「聞こえに悩む人々のQOL向上に貢献したい」とコメントしている。
カシオ計算機「earU」ブランドで集音器市場に参入
カシオ計算機(以下、カシオ)も、電子楽器などで培ったデジタル制御技術を活用し、「聞こえ」の悩みを解決する新ブランド「earU(イアユー)」を開始。5月28日に、耳をふさがないカフ型形状のヒアリングアシストイヤフォン「ER-100」3機種(各4万9940円、ECサイト価格)を家電量販店や自社ECストアなどで発売した。すでに好調に推移しているという。
ER-100は耳の穴を塞がず、周囲の音を取り込みながら会話をクリアにする。カシオの担当者は「当社のデジタル技術を活かし、聞こえの課題に新たな解決策を提供する」と述べている。
ミライスピーカー、イヤカフ型集音器でクラウドファンディング成功
テレビの音を聞きやすくする「ミライスピーカー」を40万台以上販売したミライスピーカー(東京都中央区)も集音器市場に参入。新製品の聞こえ調整機能付きイヤカフ型集音器「MIRAI SPEAKER Ear(ミライスピーカー・イヤー)」2機種(各3万9600円、アプリでの調整機能がない「ライト」は各2万9700円)は、実施中のクラウドファンディングで約4億5000万円を集めている(2026年7月中旬時点)。
同製品はテレビの音声に特化した従来モデルとは異なり、日常会話や外出先での聞こえをサポートする。ミライスピーカーの担当者は「多くの方に聞こえのストレスから解放されてほしい」と話す。
補聴器普及率の低さが集音器市場を後押し
日本の補聴器普及率は15.6%と欧米に比べて低く、価格や見た目への抵抗感が障壁となっている。集音器は補聴器より安価で、認証不要のため気軽に購入できる。NTTソノリティ、カシオ、ミライスピーカーの3社は、いずれもクラウドファンディングで目標額を大幅に上回る資金を調達しており、消費者の関心の高さがうかがえる。
市場調査会社によると、国内の集音器市場は2026年に前年比30%増の50億円規模に成長する見通し。今後も新規参入が続き、競争が激化すると予想される。



