スズキ初の軽EV「e SKY」試乗 軽自動車の使い勝手を維持した仕上がりとは
スズキ初の軽EV「e SKY」試乗 軽の使い勝手維持

スズキの軽乗用EV第1弾となる「e SKY」のプロトタイプに試乗した。日本の軽自動車業界を引っ張ってきたスズキが満を持して世に問う軽EVは、どんな仕上がりなのか。

軽ユーザーのEV移行は進むのか

スズキはこれまでに、軽EVのコンセプトカー2台を製作している。ジャパンモビリティショー2023で公開した「e WX」と同2025で公開した「Vision e-Sky」だ。今回のプロトタイプは、後者がベースの量産化モデルとなる。日産自動車「サクラ」やホンダ「N-ONE e:」に対抗すべく開発したモデルで、コンセプトは「Easy to Switch!」。“EVである前に、軽自動車である”という思想が基本で、生活スタイルを変えることなく乗れることを目指し、生活の足としての軽自動車にEVの要素を加え、日常をより快適にすることを追求した。

「e SKY」のスペックはボディサイズが全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,625mm、ホイールベース2,460mm、最低地上高140mm、車重1,030kg。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

少ない電気でたくさん走る

e SKYは容量26kWhのバッテリーを搭載する2WDモデルで、一充電走行距離は310km。97Wh/kmという交流電力消費率は国産EV最小の数値で、「日常使い+α」(隣県へのドライブなど)という軽自動車ならではの使われ方に“ちょうどいい”性能を持つという。

充電性能(充電警告灯点灯から100%まで)は普通充電なら3kW(200V16A)で約8時間、6kW(200V30A)で約4.5時間、急速充電(同80%まで)は50kWで約25分。軽自動車ユーザーの走行距離は1日(平日)に約20kmというデータがあるので、普段使いであれば充電は数日に一度で済むし、夜間に普通充電につなげておけば翌朝には満タンになっている。

パワートレイン(モーター、インバーター、ギア)を一体化した「スリーインワン構造」のeAxleはコンパクトかつ軽量。ボディ形状やアンダーカバーを含めて細部まで作り込み、軽自動車トップレベルの空力性能を実現した。搭載するのは薄型構造で長寿命のLFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池)だ。スズキが掲げるクルマ作りの思想「小・少・軽・短・美」にこだわった軽EVといえる。

「スマート」「アイコニック」「コージー」な内外装

e SKYの内外装は、洗練・安心・軽快感を与える「スマート」、タイムレスで流行に左右されない「アイコニック」、親しみやすく穏やかな相棒のような「コージー」がテーマ。エクステリアは浮遊感のあるルーフと分厚いボディを組み合わせた。前側のピークから後ろ下がりに軽快に抜けていくショルダーラインは、スズキの初代「スズライト」を彷彿とさせる。

前後には、デジタル数字のようなグラフィックを持つアイコニックで先進感のあるライトを搭載。フロントフェイスは親しみやすい穏やかな表情だ。インテリアはEVらしいスマートなワイドディスプレイに、白い陶器のような温かみのあるインパネデザインを組み合わせた。インパネからドアにかけてはラウンドデザインを採用。乗員を包み込むような雰囲気を演出している。小さな空間ながら、広さと心地よさが感じられる。

走れば実感! 軽とEVは相性抜群

e SKYのプラットフォームは、軽EV専用で新たに開発した「HEARTECT e」だ。床下に効率よく電池を配置し、軽量・高剛性を実現している。タイヤは重量増に対応した165/65R14サイズのダンロップ「eエナセーブ」で、最小回転半径4.4mという取り回しの良さを実現している。

試乗したのは千葉県の「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」で、ピット前のストレートは100km/h、各コーナーは50~70km/hの速度制限が求められた。ドライバーズシートに乗り込むと、シフトは見慣れた「P-R-N-D-B」のスライドレバー式で、操作に戸惑うことはなかった。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

走行モードはガソリン車の感覚に近い「D」、回生ブレーキ強めの「B」、アクセル操作のみで加減速し、停車寸前まで対応できるワンペダルモード(押しボタン式スイッチで切り替えられる)がある。

走りの味付けは、そっと踏めば優しく、ぐっと踏めば力強く加速するという感じ。反応速度は急激さよりも滑らかさを優先している印象だ。ラフな操作をしても車両の挙動が乱れないという、スズキらしい安全なセッティングになっているのが印象的だった。ワンペダルモードも味付けは同様。アクセルを戻した時に急激な減速があればEVらしさを強く感じられるのだが、そこは抑えめなセッティングだった。同乗者の不快感を最小限に抑えるためだそうだ。

アクセル操作のみで完全停止させることはできない(クリープを残した)理由としては、停車まで可能になると踏み間違い事故のリスクが高まるという社内データに基づいて判断したのだという。

それでも、最終コーナーを抜けてフルスロットルにすれば、100km/hまではすぐに到達できた。ガソリンの軽に比べれば圧倒的にパワフルだ。低重心をいかし、大きなロールを見せることなく中速コーナーをしれっと抜けていける優れたシャシー性能など、トータルではなかなかの仕上がりだと判断できた。

一方、静粛性に関しては、試乗時間中に突然の大雨に見舞われたため、フロントガラスに当たる雨音やタイヤからのウェットノイズが大きく、通常走行でのレベルは未確認だ。ほぼ全開走行での電費は6.0km/kWh(167Wh/km)の表示。97Wh/kmという公称値よりかなり悪化したが、これはサーキットでの試乗だったからだ。このクルマで、こんな走り方をすることはまずないだろう。「音」も含めて、量産モデルで再度確認したいところだ。

e SKYは静岡県の湖西工場で生産する。装備やライバルとの比較は別項で。