ヒョンデ新型FCEV「ネッソ」試乗! 航続1,000km超の実力と課題を徹底チェック
ヒョンデ新型FCEV「ネッソ」試乗! 航続1,000km超の実力と課題

韓国のヒョンデが日本で発売した燃料電池自動車(FCEV)の新型「ネッソ」に試乗した。満タンで1,000km級という驚異の航続距離を誇る水素SUVの完成度は高かったが、購入を考えるなら気になるポイントも。正直なところをお伝えしたい。

ネッソってどんなクルマ?

「NEXO」(ネッソ)は韓国のヒョンデ(Hyundai)が製造する燃料電池自動車(FCEV)。FCEVは水素で発電してモーターで走るクルマだ。2018年に登場した初代ネッソは、2024年までに世界で4万台が売れたという。現行の新型ネッソは2025年の発売以降、韓国で7,500台以上を販売。日本では2026年4月に発売となった。

2代目「ネッソ」のボディタイプはミドルサイズSUV。ボディサイズは全長4,750mm、全幅1,865mm、全高1,690mm、ホイールベースは2,790mmだ。サイズは日本で販売しているホンダのFCEV「CR-V e:FCEV」と近い。写真は「Lounge+」グレード、ボディカラーは「ゴヨーカッパーパール」。

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パワートレインは燃料電池システムと駆動用バッテリー、そして前輪を駆動するモーターで構成される。モーター最高出力は150kW(204PS)、最大トルクは350Nm。駆動方式は前輪駆動(FF)だ。

新型ネッソ最大の特徴は航続距離

新型ネッソ最大の特徴は航続距離だ。54Lの水素タンクを3本搭載し、総容量は162L。一充填走行距離はエントリーグレードの「Voyage」で1,014km、上級グレードの「Lounge」系でも970kmに達するとしている。

現在、日本で購入できる量販FCEVは、トヨタ自動車「MIRAI」やホンダ「CR-V e:FCEV」など選択肢が限られている。その中で新型ネッソは、1,000km級の航続距離とSUVならではの実用性を武器に、水素モビリティの新たな選択肢を提示するモデルといえそうだ。

「ネッソ」と同じSUVタイプのFCEVであるホンダ「CR-V e:FCEV」と比較してみた。

装備充実! 乗って満足! でも…

今回はネッソの最上級グレード「Lounge+」に試乗した。ネッソは電気でモーターを回して走るクルマなので、走っていても止まっていてもとにかく静か。サイズは写真を見て想像していたほど大きくなく、ハンドルは軽くて運転しやすい。

回生ブレーキ(アクセルを戻した時の減速)の強さは0~3レベルの4段階で調整可能。ハンドルの裏側にあるパドルで調整できるので、走行シーンに合わせて減速の強さを調節できるのが嬉しい。回生を強めにして「オートブレーキホールド」をONにしておけば、信号が多い街中でも快適に走れる。

高速道路に乗る際には強めにアクセルペダルを踏んでみたが、加速力は必要十分でありながら、一部のEVで見られるワープするような力強さではなく、ごく自然な感じだった。ドライブモードは「ノーマル」だったので、ひょっとすると、「スポーツ」に入れれば挙動が変わるのかもしれない。

前席にシートベンチレーションを完備した車内は快適そのもの。大きなガラスルーフがあって開放感が抜群だ。試乗車のインテリア「セレーングレー/モシアイボリー2トーン」(本革)は高級感があって、いかにも「上質な移動空間」といった満足感が味わえる。

かなり気分よく試乗を楽しめたのは間違いない。乗り心地はフワフワしたところがなくて、どちらかというとしっかりした「硬め」な感じ。とはいえ、段差でガタガタくるような不快感は皆無で、上質な走りだと思えた。

装備充実で乗って快適なネッソなのだが、結局のところ、このクルマを買えるかどうかは「FCEVを便利に運用できるかどうか」にかかっているだろう。

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水素インフラの現実と価格

クルマに水素を充填できる施設は、はっきりいって、街を歩いていてもほとんど見かけないし、どんどん増えてきているという気配もない。一般社団法人次世代自動車振興センターのHPを見ると、2026年7月1日現在で日本にある水素ステーションの数は141カ所とのこと。ガソリンスタンドに比べてもEVの充電器に比べても、桁違いに数が少ない。

ネッソは水素満タンで1,000km走るというから、普通に乗っていれば月に数回、下手をすると数カ月に1回だけ水素ステーションに行けば、運用できそうではある。ただ、ステーションが遠いと億劫だし、ガソリンスタンドのように夜遅くまで開いているわけでもないらしいから、住んでいる場所の近くにステーションがあるかどうかでネッソの魅力は大きく変わってくる。生活圏内に水素ステーションがないと、けっこう厳しいのではないだろうか。

ネッソは3グレード展開で価格は750万円~835万円。国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(CEV補助金)147万円が取得可能で、東京都が実施する「ZEV車両購入補助金」170万円の補助も想定されているそうだ。補助金をフルで取得した場合、試乗した「Lounge+」は500万円ちょっとということになる。装備の内容や質感から考えると、けっこう安いのではないかと感じる。FCEVであることを許容できる人にとっては、魅力的な選択肢になりうるクルマだ。

荷室容量は510Lを確保。後席を倒せば最大1,630Lだ。後席下などに水素タンクを効率的に配置することで、後席フロアのフラット化とSUVとしての実用性を両立させたという。

FCEVは普及するのか? ヒョンデに聞いてみた

とはいえ、水素インフラの現状を考えると、ネッソを日本でたくさん売るのは難しそう。いろいろと気になることもあったので、ネッソ試乗に合わせてヒョンデにいくつか質問してみた。やり取りは以下の通りだ。

――日本ではFCEVが普及しているとは言えない状況です。販売台数が見込めない状況の中で、ネッソを日本に投入した狙いは?

ヒョンデ モビリティ ジャパン: FCEV市場は現時点で、まだ成熟した市場ではないと認識しております。しかし、ヒョンデは水素を電動化戦略の重要な柱のひとつと位置付けており、日本はその可能性を持つ重要な市場であると考えています。ネッソの投入は、短期的な販売台数の拡大のみを目的としたものではありません。モビリティ分野の脱炭素化に向けて、水素エネルギーの可能性をお客様や社会に提案し、水素社会の実現に貢献していくことが目的です。

――先代モデルから日本で販売していたと思いますが、ネッソの日本での販売状況は? これまでに何台くらい売れていますか?

ヒョンデ モビリティ ジャパン: 販売台数については、個別の数字は公表しておりません。一方で、法人・自治体・研究機関などを中心に、水素モビリティへの関心は継続的にいただいております。NEXOについては従来以上に商品性や航続距離、安全性能が向上しており、今後はBtoB・BtoCの両面から展開していく予定です。

――日本以外でネッソを販売している国・地域は? そちらでの売れ行きは?

ヒョンデ モビリティ ジャパン: 韓国をはじめ、欧州や北米など複数の市場で展開しています。市場ごとにインフラ整備状況や政策環境が異なるため、一概に比較することは難しいですが、水素インフラや支援制度が整備されている地域ではFCEVの活用も進んでいます。

――日本ではミライやCR-V、それとBMWもFCEVを販売していたかと思いますが、それらに対するネッソの優位性は?

ヒョンデ モビリティ ジャパン: 1,000kmを超える長い航続可能距離、広々とした室内・荷室空間、そしてユニークなスタイリングや750万円からお買い求めいただける高いコストパフォーマンスなど、多くの優位性を備えております。

――FCEVの今後についてなのですが、水素充填ステーションが増えていく兆しは見えません。今後、FCEVを便利に使える体制は整っていくと思いますか? 日本での水素インフラ整備に向けて、ヒョンデとして打つ手はありますか? ネッソの今後の販売戦略は?

ヒョンデ モビリティ ジャパン: FCEVの普及においては、車両だけでなく水素インフラの拡充が重要であると認識しています。インフラ整備は自動車メーカー単独で実現できるものではなく、政府・自治体・エネルギー事業者・インフラ事業者など、多くの関係者との連携が不可欠です。ヒョンデはグローバルで培ってきた水素事業の知見をいかしながら、日本においても水素モビリティへの理解促進や水素に関する情報発信、人材育成などを通じて市場形成に貢献していきたいと考えています。販売戦略としては、BtoBでは商用タクシー市場を中心に、BtoCでは環境意識の高いお客様を中心に展開してまいります。また、「水素マイスター制度」を通じて、お客様へ水素エネルギーに関する理解促進も行い、水素社会全体を見据えた提案を続けていく予定です。

「Lounge+」はデジタルサイドミラーを装備。ヒョンデのクルマではおなじみ! ウインカーを出すと、メーター内の丸窓で曲がる方向の後方の映像が確認できる。Googleマップ連携ナビゲーションおよびアプリ内水素ステーションの検索機能を搭載。