電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品サプライヤーはかつてない構造転換を迫られている。トヨタ自動車グループの中核部品メーカーであるデンソーは、エンジン関連部品からEV向け製品へのシフトを本格化させている。同社は2025年度までにEV向け部品の売上高を現在の約2倍の1兆円に引き上げる計画だ。
部品点数減少がもたらす競争激化
EVはエンジン車に比べ部品点数が約3分の1に減少するとされ、従来エンジン周りで収益を上げてきたサプライヤーにとっては死活問題となる。デンソーの林宏之社長は「内燃機関関連の部品需要は今後減少する。我々は電動化や自動運転など成長分野に経営資源を集中する」と述べている。
こうした動きはデンソーだけではない。独ボッシュやコンチネンタルなど欧州の大手サプライヤーもEV向け製品へのシフトを加速。日本のサプライヤーも追随を余儀なくされている。日立Astemoは2024年度までにEV向けモーターやインバーターの生産能力を現在の2倍に引き上げる方針だ。
技術革新とコスト競争力の重要性
EVシフトで部品点数が減る一方、サプライヤー間の競争は激化している。従来のエンジン関連部品では培われた技術や取引関係が強みとなったが、EVでは新たな技術が求められる。特にバッテリーやモーター、パワーエレクトロニクスなどの中核部品では、自動車メーカーが内製化を進める動きもあり、サプライヤーはより高い技術力とコスト競争力を求められる。
デンソーはEV向け熱マネジメントシステムやパワー半導体に注力。熱マネジメントはバッテリーの性能維持に不可欠で、パワー半導体は電力変換効率を左右する。同社はこれらの分野で世界トップクラスの技術を持つとされる。
生き残りをかけた選択と集中
サプライヤー各社は選択と集中を迫られている。デンソーはエンジン関連部品の生産を縮小し、EV関連の研究開発費を2025年度までに年間3000億円に増やす計画。また、グループ外への販売も拡大し、トヨタ依存からの脱却を図る。
一方、中小サプライヤーは厳しい状況にある。ある部品メーカーの幹部は「EVシフトで従来の部品が不要になる。新しい技術を開発しなければ生き残れないが、資金力や人材が不足している」と打ち明ける。
業界団体の日本自動車部品工業会によると、部品サプライヤーの数は今後10年で現在の約2万社から半減する可能性があるという。生き残るためには、EV関連技術の開発やM&Aによる規模拡大、異業種との連携などが不可欠となる。



