EVシフトで変わる自動車部品サプライチェーンの未来
EVシフトで変わる自動車部品サプライチェーン

電気自動車(EV)の世界的な普及に伴い、自動車部品のサプライチェーンが大きく変貌しようとしている。従来のエンジンやトランスミッションなどの主要部品は需要が減少する一方、バッテリーやモーター、パワーコントロールユニットといったEV特有の部品へのシフトが加速。日本のサプライヤーは、この構造変化に適応するため、事業ポートフォリオの見直しや新技術への投資を迫られている。

エンジン部品需要の減少とEV部品の台頭

国際エネルギー機関(IEA)の2023年の報告書によると、世界のEV販売台数は2022年に前年比55%増の約1000万台に達し、自動車販売全体の14%を占めた。この急成長は、エンジン部品を主力とする多くの部品メーカーに深刻な影響を与えている。例えば、ピストンやバルブ、燃料噴射装置などの需要は、内燃機関車の生産減少に伴い、2025年以降にピークアウトすると予測されている。

一方、EV向け部品の市場は急拡大している。調査会社マークラインズのデータによると、EV用バッテリーの世界市場規模は2022年に約4兆5000億円で、2030年には約15兆円に成長する見込み。モーターやインバーターなどの駆動系部品も同様に拡大し、日本の部品メーカーにとって新たな収益源となる可能性がある。

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サプライチェーンの再編と地域分散化

EVシフトは、サプライチェーンの地理的構造も変えている。従来のエンジン部品は、日本のサプライヤーが高い技術力と品質で優位性を保ってきたが、EV部品ではバッテリー材料の調達や生産拠点が中国や韓国、欧米に偏在。特にリチウムイオンバッテリーの生産では、中国企業が世界シェアの約7割を占め、日本企業は後れを取っている。

こうした状況を受け、日本の部品メーカーは海外での生産拠点拡大や、異業種との提携を進めている。例えば、デンソーは2023年に米国のEVバッテリーリサイクル企業に出資し、サプライチェーンの循環型モデル構築を目指す。また、アイシンはトヨタ自動車と共同でEV向けeアクスル(モーター、インバーター、ギアを一体化したユニット)の生産能力を2025年までに倍増する計画を発表した。

中小部品メーカーの生き残り戦略

大手に比べ、中小の部品メーカーは変革の難しさに直面している。取引先からのEV化要請に応えるため、研究開発費の負担が重く、人材確保も課題だ。東京都の部品メーカー経営者は「従来のエンジン部品の受注が減り、EV部品の試作依頼は増えているが、量産までこぎつけるか不透明。設備投資に踏み切れない」と打ち明ける。

一方で、専門性を活かしてニッチ分野で存在感を示す企業もある。例えば、ある金属加工メーカーは、EV用モーターのコア部品である電磁鋼板の精密打ち抜き技術で、国内外のモーターメーカーから受注を獲得。2023年度のEV関連売上高は前年比30%増となった。

政府の支援と産業政策の役割

日本政府も、部品サプライチェーンの変革を後押しする。経済産業省は2023年に「自動車部品サプライチェーン強靭化策」を策定し、EV部品への転換を図る中小企業に対し、補助金や税制優遇を提供。特にバッテリーや半導体など戦略物資の国内生産拠点整備に重点を置き、2030年までにEV関連の部品市場で30兆円規模の国内需要創出を目標に掲げる。

しかし、業界団体の関係者は「政府の支援は有効だが、スピード感が重要。欧米や中国の補助金合戦に負けない規模と迅速さが必要」と指摘。日本の部品メーカーがグローバル競争で生き残るには、官民一体となった戦略的な投資と、サプライチェーン全体の効率化が不可欠だ。

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EVシフトがもたらす雇用と地域経済への影響

部品サプライチェーンの変革は、雇用や地域経済にも波及する。エンジン部品の生産に特化した工場がある地方では、雇用喪失のリスクが高まっている。一方、バッテリー工場の新設などにより、新たな雇用が生まれる地域もある。例えば、九州地方では、複数のバッテリーメーカーが工場を建設中で、2025年までに約5000人の雇用創出が見込まれる。

自動車部品サプライチェーンの未来は、EVシフトという不可逆的な流れの中で、日本のものづくり産業の競争力を左右する重要な岐路に立っている。技術革新と事業構造の転換をいかに迅速かつ効果的に進めるかが、各企業の命運を分けるだろう。