世界的な電気自動車(EV)シフトに黄信号がともっている。各国の販売減退や規制の不確実性を受け、トヨタ自動車やフォード・モーターなど世界の自動車大手が相次いでEV戦略の見直しを迫られている。
需要減退で生産目標を下方修正
トヨタは2026年のEV生産目標を従来の150万台から100万台に引き下げた。フォードもEVの生産目標を引き下げ、ハイブリッド車(HV)への投資を拡大する方針だ。ドイツのメルセデス・ベンツも、2030年までに新車販売の50%をEVにする目標を撤回し、HVを含む電動化戦略に転換した。
これらの動きの背景には、EV需要の減速がある。2023年の世界のEV販売台数は前年比31%増と成長を続けているが、伸び率は鈍化している。特に欧州では、補助金の縮小や充電インフラの未整備が需要の足かせとなっている。
中国勢は攻勢、価格競争激化
一方、中国のEVメーカーは攻勢を強めている。比亜迪(BYD)は2023年に世界で約302万台のEVを販売し、テスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなった。中国勢は低価格帯のEVを投入し、価格競争を激化させている。
「中国メーカーの台頭により、従来の自動車メーカーはEV事業で苦戦を強いられている。特に、収益性の確保が課題だ」と、自動車アナリストの山田氏は指摘する。
規制の不確実性も影響
各国政府のEV推進政策にも不透明感が漂う。欧州連合(EU)は2035年までにガソリン車の新車販売を事実上禁止する方針を掲げるが、加盟国からは慎重論も出ている。米国でも、2024年の大統領選挙の結果次第で、EV税制優遇措置が変更される可能性がある。
日本政府は2035年までに新車販売を全て電動車にする目標を掲げるが、EVだけでなくHVや燃料電池車(FCV)も含むため、実質的にEVシフトは緩やかだ。
自動車メーカーの岐路
こうした状況下で、自動車メーカーはEV一辺倒ではなく、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)など複数の電動化技術を組み合わせた戦略を模索している。トヨタは「マルチパスウェイ戦略」を掲げ、EVに加えてHVや水素エンジン車にも注力する。
「EVシフトは不可避だが、そのスピードや方法は各社の事情によって異なる。重要なのは、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応だ」と、業界関係者は語る。
世界の自動車産業は、EVシフトの「踊り場」を迎えている。各社の戦略見直しは、長期的な電動化の方向性を変えるものではないが、短期的な市場の変化に対応するための現実的な選択と言える。



