電気自動車(EV)への移行が加速する中、従来のガソリン車向け部品を主力としてきたサプライヤー各社は、事業の存続をかけた大きな転換点に立たされている。内燃機関(エンジン)や排気系、燃料タンクなど、ガソリン車に不可欠な部品の需要は今後、急激に縮小することが予想され、関連企業は新たな収益源の確保が急務となっている。
ガソリン車部品市場の縮小とサプライヤーへの影響
日本政府は2035年までに新車販売を全て電動車両とする目標を掲げ、各自動車メーカーもEVへの生産シフトを加速させている。これに伴い、エンジン部品や燃料供給システムなどの需要は減少の一途をたどるとみられる。特に、エンジンバルブやピストン、燃料噴射装置などを手がける中小部品メーカーへの打撃は大きく、一部では受注の減少により経営が悪化しているケースもある。
業界団体の試算によると、2030年までに国内のガソリン車部品市場は2020年比で約30%縮小すると見込まれている。この市場縮小は、部品サプライヤーの売上高や雇用に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。ある部品メーカーの幹部は「これまでのビジネスモデルが通用しなくなるのは明らかで、早急に新領域への進出を検討しなければならない」と危機感をあらわにする。
EV向け部品への転換と水素技術への投資
こうした状況の中、多くのサプライヤーはEV向け部品の開発・生産に乗り出している。例えば、エンジン部品を手がけていた企業は、EVのモーターやインバーターに使われる部品への転換を進めている。また、排気系部品メーカーは、バッテリー冷却システムや熱管理技術の開発に活路を見いだそうとしている。
さらに、水素燃料電池車(FCV)向けの技術開発にも注目が集まっている。水素は次世代のエネルギー源として期待されており、一部のサプライヤーは水素タンクや燃料電池スタック用の部品開発に着手している。これにより、ガソリン車で培った金属加工やシール技術などのノウハウを活かしながら、新たな市場を開拓する狙いがある。
政府の支援と業界再編の動き
政府もこうしたサプライヤーの取り組みを後押しするため、補助金や税制優遇措置を拡充している。経済産業省は、EVや水素関連技術への投資を行う中小企業向けに最大数千万円の補助金を用意しており、業界の構造転換を支援する方針だ。
一方で、業界内では再編の動きも活発化している。資本力のある大手サプライヤーが中小企業を買収し、技術や人材を取り込むケースが増えている。また、異業種からの参入も相次いでおり、電子部品メーカーや素材メーカーが自動車部品事業に進出する例も見られる。
生き残りをかけた新たな競争
EVシフトは、自動車産業のサプライチェーン全体に変革を迫っている。ガソリン車部品サプライヤーにとっては、従来の技術をどう活かし、新たな市場で競争力を築くかが問われている。技術革新のスピードが速いEV市場では、開発力やコスト競争力が一層重要になる。生き残りをかけた企業間の競争は今後、さらに激しさを増すと予想される。



