世界の電気自動車(EV)市場は、中国を中心に急拡大を続けている。2023年の世界のEV販売台数は前年比35%増の約1400万台に達し、そのうち中国が約60%を占めた。一方、日本のEV販売台数は約8万8000台と、世界市場の0.6%に過ぎず、日本メーカーの存在感は薄れつつある。
中国市場の急成長と技術優位
中国では、政府の強力な補助金政策と充実した充電インフラがEV普及を後押ししている。比亜迪(BYD)や上海汽車などの地場メーカーが低価格帯から高級車まで幅広いラインアップをそろえ、2023年の中国EV販売台数は前年比36%増の約810万台に達した。特にBYDは、世界のEV販売でテスラを抜いて首位に立った。
中国メーカーの強みは、電池やモーターなどの主要部品を自社で生産できる垂直統合型のビジネスモデルにある。これにより、コスト競争力と技術革新のスピードを両立している。また、中国の充電インフラは世界最大規模で、2023年末時点で公共用充電器が約260万基設置されている。
日本メーカーの苦戦と戦略課題
日本メーカーは、ハイブリッド車(HV)で世界をリードしてきたが、EVシフトでは出遅れている。2023年の日本のEV販売台数は約8万8000台で、新車販売に占めるEV比率は2%未満と低い。トヨタ自動車は、EV専用プラットフォームの開発を進める一方で、HVや水素燃料電池車にも注力するマルチパスウェイ戦略を掲げる。しかし、市場のEVシフトが加速する中、戦略の見直しを迫られている。
日産自動車は、リーフでEV市場を先駆けたが、近年は競争力を失っている。2023年に発売した新型EV「サクラ」は軽自動車クラスで一定の成功を収めたものの、海外市場での存在感は限定的だ。ホンダは、2024年から北米でGMと共同開発したEVを投入する計画だが、中国市場では地場メーカーとの競争が激しい。
サプライチェーンと資源確保の課題
EVシフトは、自動車産業のサプライチェーン全体に変革を迫っている。電池材料のリチウムやコバルトなどの資源確保が重要課題となり、日本メーカーはカナダやオーストラリアなどでの資源権益獲得に動いている。また、半導体やソフトウェアの重要性が増し、従来の部品メーカーにも技術転換が求められる。
経済産業省は、2035年までに国内新車販売の全てを電動車(EV、HV、PHV、FCV)にする目標を掲げるが、充電インフラの整備や再生可能エネルギーの拡大が課題だ。日本政府は、EV電池の国内生産拠点整備に約1兆円の支援を計画している。
日本メーカーの巻き返しは可能か
日本メーカーは、品質や燃費性能では依然として強みを持つが、EV市場では中国メーカーの低価格攻勢とテスラのソフトウェア優位に対抗する必要がある。トヨタは、2026年までに次世代EVを投入し、航続距離や生産コストで競争力を高める計画だ。また、ソニー・ホンダモビリティによる高付加価値EVの投入も注目される。
アナリストは、「日本メーカーは、EVシフトに消極的だったが、最近の投資表明は評価できる。しかし、中国市場でのシェア回復には時間がかかるだろう」と指摘する。日本の自動車産業が世界競争力を維持するには、電池やソフトウェアへの戦略的投資と、海外パートナーとの協業が不可欠だ。



