EVシフト加速で変わる自動車産業のサプライチェーン
EVシフト加速で変わる自動車サプライチェーン

電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、自動車産業のサプライチェーンはかつてない変革を迫られている。従来のエンジンやトランスミッションなどの主要部品に代わり、バッテリーやモーター、パワーエレクトロニクスといったEV向け部品の需要が急増。これに伴い、部品メーカー各社は生き残りをかけて事業構造の転換を急いでいる。

エンジン部品メーカーの苦境

エンジンや排気系、燃料噴射装置などを手がける部品メーカーは、EVシフトにより需要減少が避けられない。例えば、ピストンリングやシリンダーヘッドなどエンジン内部の精密部品を製造する企業は、ガソリン車の生産台数減少に伴い、受注が減少している。ある部品メーカーの幹部は「10年後にはエンジン関連の売上高が半分以下になる可能性がある」と語る。

EV部品へのシフトと新たな競争

一方で、EV向け部品へのシフトを進める企業も多い。モーターやインバーター、バッテリーパックなど、EVに不可欠な部品の需要は拡大しており、新規参入も相次いでいる。特にバッテリー分野では、パナソニックやGSユアサなどの既存電池メーカーに加え、自動車部品メーカーのデンソーやアイシンも参入。さらに、中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションなど海外勢との競争も激化している。

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また、EVでは車両の電動化に伴い、電子制御ユニット(ECU)や半導体の搭載量が増加。これにより、従来の機械加工技術に加え、ソフトウェアや電子回路の設計能力が求められるようになった。部品メーカーは、こうした技術領域への人材投資を急いでいる。

サプライチェーン全体の再編

EVシフトは部品メーカーだけでなく、素材メーカーや加工メーカーにも影響を及ぼしている。例えば、エンジンに使われるアルミニウム鋳物や鉄鋼の需要は減少する一方、バッテリーに使われるリチウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタル需要が急増。これにより、素材メーカーも生産ラインの転換を迫られている。

また、EVの生産工程では、従来のエンジン車に比べて部品点数が少ないため、組み立て工程が簡素化される。これにより、部品メーカーから完成車メーカーへの納入形態も変化。従来のようなエンジンやトランスミッションのモジュール供給から、バッテリーパックや駆動ユニットなど、より完成度の高いモジュール供給が増えると予想される。

中小部品メーカーの生き残り戦略

こうした変化に対応できない中小部品メーカーは、淘汰されるリスクに直面している。ある中小部品メーカーの社長は「EVシフトで当社の主要製品の需要がなくなる。新しい技術を開発する余裕もなく、大手に買収されるか廃業するしかない」と危機感を募らせる。

一方で、既存の技術をEV向けに転用できる企業はチャンスをつかんでいる。例えば、エンジンの冷却技術をバッテリーの冷却システムに応用するなど、既存技術の応用でEV市場に参入するケースも見られる。

政府の支援と今後の展望

日本政府も、こうした構造変化に対応するため、補助金や税制優遇を通じてEV関連投資を促進している。経済産業省は、蓄電池の国内生産基盤強化に向けて、2022年度から約3,300億円の支援を決定。これにより、部品メーカーのEVシフトを後押しする。

しかし、世界的なEVシフトのスピードは予想以上に速く、対応が遅れた企業は競争から取り残される可能性が高い。自動車産業のサプライチェーンは、今後10年で大きく姿を変えるだろう。

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