電気自動車(EV)へのシフトが世界的に加速する中、日本の自動車産業はかつてない変革を迫られている。特に、部品サプライチェーンは根底から揺らいでおり、日本の部品メーカーは競争力維持のために、従来のビジネスモデルからの脱却が急務となっている。
EVシフトがもたらすサプライチェーンの激変
従来のガソリン車では、エンジンやトランスミッションなど、複雑な機械部品が多くを占めていた。これらの部品は、長年にわたる「すり合わせ」によって最適化され、日本の部品メーカーは高い競争力を誇ってきた。しかし、EVではモーターやバッテリー、インバーターといった電動部品が主流となり、部品点数はガソリン車の約3万点から約2万点に減少すると言われる。この構造変化は、日本の部品メーカーにとって大きな脅威だ。
さらに、EVのコア部品であるバッテリーは、中国や韓国のメーカーが世界市場を席巻している。日本の部品メーカーは、これまで培ってきた技術やノウハウが通用しない新たな競争に直面している。
「すり合わせ」から「組み合わせ」への転換
日本の自動車産業の強みは、完成車メーカーと部品メーカーが緊密に連携し、車種ごとに最適な部品を共同開発する「すり合わせ」にあった。しかし、EVでは部品のモジュール化が進み、標準化された部品を「組み合わせる」ことで車両を開発する傾向が強まっている。この変化に対応できなければ、日本の部品メーカーは競争力を失う恐れがある。
例えば、EV用のモーターやインバーターは、複数のメーカーが汎用部品を供給できるようになってきている。完成車メーカーは、自社で開発するよりも、性能やコスト面で優れた汎用部品を調達する方が効率的と判断するケースが増えている。こうした流れは、日本の部品メーカーに「すり合わせ」から「組み合わせ」へのビジネスモデル転換を迫っている。
日本の部品メーカーに求められる戦略
日本の部品メーカーが競争力を維持するためには、以下のような戦略が考えられる。第一に、EV向けのコア部品であるバッテリーやモーター、インバーターなど、高付加価値な領域へのシフトだ。特に、バッテリーはEVの価格の約3割を占めるとされ、その技術開発は極めて重要である。
第二に、自動運転やコネクティッドカーなど、ソフトウェア領域への進出だ。EVはソフトウェアによって価値が決まる「ソフトウェア定義車両(SDV)」へと進化しており、部品メーカーもソフトウェア開発能力が求められる。
第三に、グローバルなサプライチェーンの再構築だ。日本の部品メーカーは、国内市場だけでなく、成長著しい中国や東南アジア市場への展開を加速する必要がある。特に、中国では現地の自動車メーカーがEVシフトをリードしており、日本メーカーとの協業も進んでいる。
政府の支援と業界の連携
こうした変革を後押しするため、日本政府も戦略的な支援を打ち出している。経済産業省は、蓄電池産業戦略を策定し、国内のバッテリー生産能力を2030年までに150GWhに拡大する目標を掲げている。また、自動車産業のサプライチェーン全体での脱炭素化を推進するため、グリーンイノベーション基金などを通じて技術開発を支援している。
業界団体である日本自動車工業会も、部品メーカーと連携した取り組みを強化している。同会は、EVシフトに対応するため、標準化やモジュール化の推進、人材育成などに取り組んでいる。
日本の自動車産業は、これまで数々の困難を乗り越えてきた。EVシフトは大きな試練である一方、新たな成長のチャンスでもある。部品メーカーが変革を遂げ、競争力を維持できるかどうかは、日本経済全体にとっても重要な課題だ。



