世界の電気自動車(EV)販売の伸びが鈍化している。2023年の世界EV販売台数は前年比31%増の約1,400万台と堅調だったが、2024年の成長率は15〜20%に減速すると予測されている。この傾向は、日本メーカーにとって新たなリスクと戦略的課題を突きつけている。
EV販売鈍化の背景と日本メーカーへの影響
EV販売鈍化の主因は、補助金縮小や充電インフラ整備の遅れ、消費者の価格感応度の高まりにある。特に中国市場では、BYDなど地元メーカーの低価格EV攻勢により、日産やホンダなど日本メーカーのシェアが低下。2024年1-6月の中国EV市場で日本ブランドのシェアは5%未満に落ち込んだ。欧州市場でも、テスラの値下げ競争に対応できず、日本メーカーの販売は伸び悩んでいる。
一方、トヨタはEV専業メーカーとは異なる戦略を取る。トヨタは2023年の世界販売でEV比率は約1%に過ぎないが、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が堅調。トヨタは「全方位戦略」を掲げ、EVだけでなく水素エンジン車や合成燃料車の開発も進めている。
トヨタの水素エンジン戦略とその可能性
トヨタは2023年、水素エンジンを搭載したカローラクロスを開発し、耐久レースでテストを実施。水素エンジンはCO2排出ゼロで、既存のエンジン技術を活用できるため、部品サプライヤーや整備工場への影響が少ない。トヨタの試算では、水素エンジン車の製造コストはEVより30%低く抑えられる可能性がある。
しかし、水素インフラの整備はEV充電器以上にコストがかかり、現時点で日本国内の水素ステーションは約170カ所と限られる。また、水素の製造過程でCO2を排出する「グレー水素」が主流であり、環境優位性には疑問も残る。トヨタの豊田章男会長は「水素はまだコスト面で課題があるが、長期的には有望な選択肢」と述べている。
日本メーカーに求められる戦略的転換
日本メーカーは、EV販売鈍化の中で「待ちの姿勢」を批判されることも多い。しかし、バッテリー技術の進化や充電インフラの整備が進めば、EV市場は再び拡大する可能性が高い。その時、技術開発で遅れを取れば、日本メーカーは競争力を失うリスクがある。
実際、日産は2024年までにEV販売比率を30%に引き上げる目標を掲げていたが、2023年実績は約10%にとどまった。ホンダも2024年に北米でEV生産を開始する計画だが、初期需要は不透明だ。日本メーカー全体として、EV技術の開発投資を継続しつつ、HVや水素など複数の技術を並行開発する「マルチパスウェイ戦略」が求められている。
生き残りをかけた協業と提携の動き
日本メーカーは、単独でのEV開発に限界を感じ、協業を強化している。トヨタとスズキは2023年、インド市場でEVの共同開発に合意。日産と三菱自動車は軽EVの共同生産を検討している。また、トヨタは中国のBYDとの合弁会社でEV用バッテリーの生産を開始。ホンダはGMとの共同開発を進め、北米市場向けのEVプラットフォームを共有する。
こうした協業により、開発コストを削減し、規模の経済を追求する動きが加速している。アナリストの間では「日本メーカーは、EVシフトのスピードに合わせて柔軟に戦略を調整できるかどうかが、生き残りの鍵を握る」との見方が強い。



