自動車部品大手のデンソーは、電気自動車(EV)向けパワー半導体の内製化を加速するため、2025年までに約1000億円を投資する方針を固めた。同社はこれまで半導体の多くを外部調達に依存してきたが、世界的な半導体不足やEVシフトの加速を背景に、安定供給と競争力強化のため自社生産へのシフトを決断した。
投資の詳細と背景
デンソーは、愛知県内の既存工場に新たな生産ラインを設置し、SiC(炭化ケー素)パワー半導体の生産を2024年にも開始する計画だ。SiC半導体は従来のシリコン半導体に比べて電力損失が少なく、EVの航続距離延長に貢献する。投資額は約1000億円で、政府の補助金も活用する見通し。
同社の林新之助社長は「半導体の内製化は、サプライチェーンの強靭化と技術競争力の向上に不可欠だ」と述べている。デンソーはトヨタグループの中核部品メーカーであり、EVシフトで部品の電子化が進む中、半導体の自社開発・生産能力の強化が急務となっている。
業界への影響
この動きは、自動車業界における半導体調達戦略の転換点となる可能性がある。従来、自動車メーカーや部品メーカーは半導体を専門メーカーから購入するのが一般的だったが、近年の供給不足で内製化の動きが広がっている。デンソーの投資は、他の部品メーカーにも波及し、業界全体の半導体戦略に影響を与えるとみられる。
また、EV市場の拡大に伴い、パワー半導体の需要は急増している。調査会社の富士経済によると、2030年のパワー半導体市場は2020年比で約3倍の3兆円規模に成長する見通し。デンソーはこの市場で優位に立つため、内製化によるコスト削減と技術差別化を図る。
今後の展望
デンソーは今回の投資に加え、半導体設計の内製化も進めており、2025年までに自社設計の半導体を搭載した製品の投入を目指す。同社は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる自動車業界の変革に対応し、EVの中核部品であるパワー半導体の内製化で競争力を高める」としている。
一方、巨額投資にはリスクも伴う。半導体製造は設備投資が膨大で、需要変動の影響を受けやすい。デンソーはトヨタグループの安定需要を背景に、投資回収のめどを立てているが、EV市場の成長鈍化など外部環境の変化には注意が必要だ。
デンソーの半導体内製化へのシフトは、自動車部品業界の構造変化を象徴する動きであり、今後の業界再編や技術競争に大きな影響を与えるだろう。



