中国のBYD(比亜迪)が日本専用に開発した軽EV(軽自動車の電気自動車)「ラッコ」が注目を集めている。発売からわずか2週間で受注台数は1,000台を超え、そのうち8割が最上級グレード「300Premium」だという。モータージャーナリストの御堀直嗣氏が、自身が所有する日産自動車の軽EV「サクラ」との比較を交えながら、ラッコに試乗した印象を報告する。
軽EV唯一のスーパーハイトワゴン
ラッコの最大の特徴は、軽EVとして唯一の「スーパーハイトワゴン」であることだ。スーパーハイトワゴンは国内で最も売れ筋の軽自動車カテゴリーで、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ工業「タント」など人気モデルがひしめく。
試乗したのは、初期受注の8割を占める最上級グレードの300Premium。試乗車の色は「ルビーレッド」と名付けられた鮮やかな赤で、内装は「ブラック」だった。300Premiumのみ「ブラック&ベージュ」の内装色も選べるが、その場合、外装色は「アークティックホワイト」と「チーズイエロー」に限られる。
300Premiumの価格は249.7万円で、15万円のCEV補助金を活用すれば234.7万円で購入できる。
上級車に匹敵する仕上がり
実車に対面してまず感じるのは外観の仕上がりのよさで、車体色の輝きもすばらしい。BYDは3年前の「ATTO3」から日本にEVを導入し、以後どの車種もできのよさを実感させてきたが、最後発のラッコは軽自動車ながら、他のBYD車と比べても品質の高さをより実感させる。
室内も、軽自動車というより上級の3ナンバー車と比較できるほど上質だ。ダッシュボードのメーターや合成皮革のシート(300Premiumに標準装備)など、内装の見栄えも居心地も登録車の上級車種の趣にあふれている。
走り出せば、その格上の手応えはさらに強まる。軽EVは重いバッテリーを床下に搭載するため低重心で、軽自動車とは思えない快適な乗り心地を実現する。モーター駆動の静かさもあり、エンジン車の軽で諦めさせられる雑さや騒音は皆無だ。
重厚な走りと実用性
サクラの車載バッテリーは20kWhで車両重量は1,070~1,080kg。一方、ラッコの300Premiumは35.84kWhとサクラの1.8倍近い容量のバッテリーを搭載し、車両重量は1,230kgと約14%重い。この重さが上級車に通じる重厚さにつながり、ハンドル操作の手ごたえも堂々とした様子で、軽とは思わせない。モーター駆動なので加速に不足はない。
軽スーパーハイトワゴンは背が高く、曲がる際にふらつくことがあるが、ラッコは床下に重いバッテリーを搭載するので、高速道路を走っても不安な挙動を示さない。全高は1.8mだ。
実用性も高い。開発では日本の軽自動車を徹底的に調査したといい、エンジン車のスーパーハイトワゴンと比べても使い勝手の不足はない。後席のゆとりは他のスーパーハイトワゴンと同様に広々とし、EVならではのリムジンのような静けさと快適さを満喫できる。
独自の装備として、後ろのスライドドアにキーを持って近づくとドア下の路面にスポットライトが灯り、足で踏むと自動的にドアが開く仕組み(300Premiumのみ)がある。他社では経験したことのない手法で、確実に作動する。後席は座面のチップアップが可能で、自動で開くスライドドアを活用し、背の高い荷物を後席床に置くこともできる。
国内で人気の軽スーパーハイトワゴンが備える利便性を網羅しながら、追加機能に独自性を感じさせるラッコは、軽スーパーハイトワゴンの有力な選択肢であることは間違いない。



