エヌアイシー・パートナーズ(NICP)は8月19日、日本IBMが提供するAIエージェント駆動のエンタープライズ向け開発支援パートナー「IBM Bob」を活用し、社内で利用していた見積作成用のExcelマクロを対象に、業務ロジックの可視化とWebアプリケーションの再構築を実施したと明らかにした。
取り組みの背景
Excelは見積作成や申請処理、集計作業、構成支援などでマクロや業務ツールとして活用されている一方で、多くは現場主導で開発・改修が繰り返されてきたため、仕様書や設計書が十分に整備されていないケースも少なくないという。
このような状況では、担当者の異動や退職によって保守・改修が困難になったり、機能追加やシステム刷新の際に既存ロジックの解析に多くの工数を要したりするなどの課題が発生しているとのこと。NICPは見積作成支援に利用していたExcelマクロについて、保守性や継続利用の観点から改善の必要性を認識していた。長年の運用や改修を通じて蓄積された業務ロジックの中には、仕様書だけでは把握が難しいものもあり、内容の理解や改修時には作成者や担当者の知見に依存する側面があった。
IBM Bobで既存業務資産の可視化と再構築
そこで、NICPはIBM Bobの分析・可視化機能やエンタープライズ環境での運用性を評価し、日本IBMとともに、自社環境を用いたクライアント・ゼロとして、IBM Bobを用いた既存業務資産の可視化と再構築に取り組んだ。
見積算出に利用していたExcelマクロをIBM Bobに取り込み、VBA(Visual Basic for Applications)コードの分析と業務ロジックの整理を実施。IBM Bobはコード構造や処理内容、データ構造を分析し、業務理解を支援する仕様情報やドキュメントを生成することから、担当者は生成された内容をレビューしつつ既存仕様を確認し、業務ロジックの整理を進めた。
今回の取り組みでは、従来は平均1~3日程度を要していた仕様把握について、約30分で全体像を把握でき、担当者の経験にもとづく従来の想定所要時間との比較において、仕様把握に要する時間を従来比約95%削減したという。
次に整理した仕様をもとに、IBM Bobの支援を受けながらWebアプリケーションへの再構築を実施。開発工程では、生成された成果物に対して担当者がレビューとテストを実施しながら改善を進めた。
プロジェクトでは、移行可否検討、実装、テスト、パフォーマンスチューニング、ドキュメント作成を含む工程を実施した。担当者による事前見積では約6週間を要すると想定されていた同等の作業について、IBM Bob活用時は約2.5日で完了し、開発工程の効率化を確認した。
また、IBM Bobとの対話を通じて必要な修正を行い、現在は業務利用可能なWebアプリケーションとして運用している。これにより、ブラウザベースでの利用に加え、見積データの蓄積・検索や過去実績の参照・再利用が可能となり、将来的な機能追加や保守を効率的に行うための基盤を整備した。
IBM Bobの活用による2段階の削減効果と今後の展望
取り組みを通じて、生成AIはコード生成を支援するだけでなく、既存システムに蓄積された業務知識や業務ロジックの理解・可視化を支援する手段として有効であることが示されたとのことだ。特に、属人化しやすい業務資産において、業務内容や処理ロジックを可視化し、関係者間で共有可能な形に整理できることを確認した。
さらに、生成AIが分析や成果物生成を担い、人がレビューや判断を行うことで、業務要件との整合性や品質を確保しながら、既存資産の理解から再構築までを効率的に進められることを確認。今回の事例は、ブラックボックス化した業務資産の理解と再活用に向けた実践事例として、生成AIを活用した既存業務資産の可視化および再構築の有効なアプローチを示すものとなりました。
両社では、今回の実践を通じて得られた知見をもとに、企業内に蓄積された既存業務資産の理解・可視化・再構築における生成AI活用を推進していく。今後、生成AIを活用した業務資産の再活用や業務改善を支援していく考えだ。



