能登・熊本の被災地支援エンジニアがAI実装とFDEの現在地を議論
能登・熊本支援エンジニアがAI実装とFDEを議論

政治プラットフォーム「PoliPoli(ポリポリ)」は8月31日、東京都港区で「公共領域におけるAI実装とFDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)の現在地」と題したイベントを開催した。この分野に詳しいスペースデータ(東京都港区)の北澤克樹CTO(最高技術責任者)と、東京都の外郭団体「GovTech(ガブテック)東京」の杉井正克氏が登壇し、高校生から大手企業のエンジニアまで約70人の参加者を前に、令和6年の能登半島地震などを例に、行政の現場でのシステム開発の実情やデジタル化の課題について議論した。

被災地支援から見えた行政現場の課題

北澤氏は、気象庁を経て米軍のAI開発で知られる米パランティア・テクノロジーズで日本法人の立ち上げに携わった。杉井氏は都庁やガブテック東京で、都のデジタル推進を担ってきた。能登半島地震では、ともに被災者データベースの構築といったデジタル分野の支援を通じて、行政課題の解決に取り組んだ。開発した避難者のデータベースは、広域避難に役立てられた。

北澤氏は「特に公共(領域)に関しては、自治体の現場の方が持つノウハウや知っていることを尊重しながら、エンジニアリングしていくのが一つの大きなポイント」と分析。行政データのデジタル化は一筋縄ではいかないといい、「市区町村の裁量も多い。エンジニアリングとして正しいデータを持っていても、現場の勘の方が正しいことがあった。輪島市や珠洲市の孤立集落では、データベースになくても、市役所の方が大体誰がどこにいるか把握しており、『息子さんがあそこにいるから、家族はどのあたりにいる』といったケースも結構あった」と振り返った。

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能登と熊本の違いとノウハウの継承

7月の熊本地震でもデジタル支援に入った杉井氏は「能登とは別の課題があり、全然違うと今、実感している」と語った。熊本地震では、被害の範囲から基礎自治体ごとの対応が主となっており、広域避難が生じた能登半島地震とは、求められるデジタル支援に違いがあったという。

一方で、デジタル支援のノウハウは継承されており、「能登半島地震を経験して、後から名寄せ(データの統合)ができるように、この項目だけはそろえましょうといった話ができつつある」と話した。一人ひとりの生活再建に深く切り込む災害ケースマネジメントの実現には、こうしたシステム開発の工夫が大切だと指摘した。

FDEとAIの可能性と限界

イベントでは、近年注目を集めるフォワード・デプロイド・エンジニアについても議論された。直訳すると、前方展開型の技術者で、AIをうまく現場の業務改善につなげるため、パランティアが確立した職種とされる。同社は「現場の担当者と一緒に課題を素早く理解し、データを使って、解決策をデザインし実行する」と表現する。

杉井氏は、公共領域のAI実装においても現場の業務を深く理解することが求められるとし、「生活保護では、国から年に100通ほどの通知がある。現場のケースワーカーさんに聞くと、『平成12年のあの通知がー』と言われ、20年さかのぼることもあり、途方に暮れているところがある」と苦労を語った。

その上で「(デジタル化する上で)日本は国からの通知が大変で、そこをコード(プログラム)化し、国も巻き込んでデジタル公共財のように、みんなで使う形がいいなと思っている。防災だと、われわれがそういう活動をし始めている」と話した。一つの自治体の課題解決が共有され、基礎自治体1741団体が楽になるといった姿を目指しているという。

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パランティアでFDEだった北澤氏は「結局、人からどう情報をくみ取るか、いかに聞き出す質問力というところ(が大切)。慣れてくるとヒアリングしながら、頭の中でも同時に考えたりする。AIにはまだできない部分であり、自治体や公共ならではの特性で、人が必ず必要な業務がある」と語った。