デジタル教科書の負の側面、手書き減少や学習妨害…有識者が「立ち止まる勇気」を訴え
デジタル教科書の負の側面、有識者が立ち止まる勇気を訴え

2026年7月、文部科学省の有識者会議は、30年度以降に使用される新たな教科書の在り方を巡り、デジタル教科書の導入に伴う負の側面について議論を重ねている。関西地方の公立中学校教諭(38)は「授業中にタブレット端末をずっと見続ける生徒が増えている」と不安を吐露。教諭が「発表資料づくりをしよう」と呼びかけても、無関係の漫画や動画を閲覧し続ける生徒がおり、端末を取り上げると暴れ出すケースもあるという。

デジタル教科書の3形態と現場の不安

新たな教科書は「紙のみ」「紙とデジタルのハイブリッド」「完全デジタル」の3形態が想定されている。完全デジタルとハイブリッドは授業での端末使用が前提となるが、導入を急ぐあまり、以前から指摘されてきた課題が解消されていない。読売新聞が5月に実施した全国小学校長アンケート(回答149人)では、懸念点として「書く時間の減少」を6割が選び、「一日中デジタルにさらされる」も5割超。「視力低下・姿勢悪化」「動画などを見てわかったつもりになる」も3~4割に上り、学校現場の不安が浮き彫りとなった。

松本文科相の判断とハイブリッドの課題

松本文科相は、完全デジタル教科書について、小学1~4年生の全教科、およびそれ以上の学年でも国語、社会、道徳での使用を認めない方針を示した。しかし、学校で主に使われるとみられるのはハイブリッド型だ。小学校長アンケートでもハイブリッドを選択する回答が目立ったが、紙とデジタルの配分などの具体的な扱いは未決定のまま。大臣指針では「手書きの減少」「健康影響」などへの対応が議論される予定で、文科省は有識者会議を月1~2回のペースで開催し、各論点の検討を進める。

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海外の「紙回帰」と生成AIの将来

海外では「紙回帰」の動きがある一方、日本は教育デジタル化のアクセルを緩めていない。6月には日本維新の会文部科学部会長の金子道仁参院議員が松本文科相に対し、子どもの理解度を分析し学習展開する機能を持つAI教科書の検討を要請。文科省は早期導入は難しいとするものの、将来的な可能性は排除していない。30年度以降の次期学習指導要領では各教科で「デジタル活用」が強調される見通しで、文科省は現行の学校向け生成AI指針を年度内に改訂し、現場での活用を促す方針だ。

有識者の警鐘「立ち止まる勇気が必要」

国立情報学研究所の新井紀子教授は「デジタル教科書や端末は情報量や刺激が多く、成長途上の小中学生の学びとしては課題がある。負の側面を科学的に検証し、立ち止まる勇気も必要だ」と訴える。AI活用については「教師不要論につながり、教育の根幹を揺さぶるだろう」と慎重な見方を示した。秋までの短期間で、学校現場の懸念に対応した実効性ある指針作りが求められている。

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