2026年、マイレージプログラムや上級会員制度は大きな転換期を迎えている。JALが先行して導入した生涯実績プログラムへの移行に続き、ANAも2026年9月にスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度を大きく見直した。これまでの常識だったフライト回数や飛行距離だけでなく、日々の決済額やライフスタイルそのものが問われる時代に突入している。本稿では、最新の制度改定を踏まえ、人生と暮らしをより豊かに楽しむための「メインエアライン」の選び方を徹底解説する。
航空会社選びのベースとなる「3つの視点」
まずは自身のライフスタイルと照らし合わせるべき3つの基本軸から、どちらの航空会社を選ぶべきか見ていきたい。
マイルは空を飛ぶだけでなく、地上で貯める「陸マイラー」活動がもはや常識だ。そのため、自分がどのポイント経済圏で生活しているかが最初の分かれ道となる。ANAマイルは、アメリカン・エキスプレス、楽天ポイントやマリオット・ボンヴォイ、エポスポイントやVポイントなど、さまざまなポイントからの交換が可能で、マイルの貯めやすさや流入ルートの豊富さにおいて軍配が上がるだろう。また、ANA Payなどのスマートフォン決済サービスも拡充しており、日々の少額決済でも無駄なくマイルを取りこぼさない仕組みが整っている。
一方のJALも、アメリカン・エキスプレス、楽天ポイントやエポスポイント、マリオット・ボンヴォイなどと提携しているが、最大の特徴はPontaポイントやdポイントとの連携だ。JAL Payを中心としたスマートフォン決済も展開しているほか、月額550円で健康とマイルが手に入る「JAL Wellness & Travel」などのサービスも展開している。加えて両者ともにインターネットサービスやモバイル事業など、航空以外にもさまざまなサービスを展開しており、それらを利用することでもマイルを貯めることが可能だ。日々の買い物、クレジットカードの決済、資産運用の引き落としなど、無意識のうちにポイントが集約されるルートをどちらに構築できるかが鍵となる。
路線・空港とアライアンスの視点
どれほどマイルを貯めても、自身の生活圏から目的地への直行便がなければ意味がない。国内出張や地方在住なら、目的の空港を拠点にしている航空会社が自然とメインになるだろう。頻繁に訪れる出張先や帰省先への便数、専用ラウンジの有無なども検討ポイントとなる。
海外旅行や海外出張の頻度が高い層は、どのアライアンスに所属しているかもチェックポイントとなる。ANAが所属する「スターアライアンス」は世界最大の加盟航空会社数を誇り、ユナイテッド航空やルフトハンザドイツ航空、シンガポール航空などを擁し、アジアや北米、ヨーロッパ方面と広範なネットワークを持つ。ANAマイルを使って、これらの航空会社の特典航空券も発券できる。
対するJALが所属する「ワンワールド」は加盟数こそ及ばないものの、アメリカン航空やブリティッシュ・エアウェイズ、キャセイパシフィック航空など、各地域を代表するメガキャリアがそろっている。また、エミレーツ航空やエールフランス航空など、ワンワールド外の航空会社と独自の提携を結んでおり、アライアンスの規模の小ささを独自ネットワークで補完している点が大きな魅力だ。ANA同様、JALマイルでこれらの提携航空会社の特典航空券も発券できる。
【2026年最新動向】激変した生涯ステイタス獲得条件
専用ラウンジの利用や優先搭乗など、上質な旅を約束する生涯ステイタスの獲得プロセスは、両社で異なる思想へと枝分かれした。
ANAは、2026年9月にスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度の再見直しを発表し、旅行界隈に大きな波紋を呼んだ。一部で「300万円の壁」とささやかれているように、従来の「1年間集中して飛行機に乗りまくる」というフライト実績(プレミアムポイント)だけではスターアライアンス・ゴールドのステイタスは付与されず、指定のクレジットカードで年間300万円以上の決済実績、あるいは複数サービスの利用を掛け合わせることが実質的な条件として浮上した。
さらにANAは、搭乗せずとも上級ステイタスを付与する新たなサービスを2026年1月に発表した。それが、大口かつ長期でANAの株式を保有している個人株主向けの優待制度だ。9月末時点で、同一株主番号で3年以上(7基準日以上)連続して2万株以上を所有する個人株主に対し、ANA最上級ステイタスである「ダイヤモンドサービス」メンバー特典の一部が提供される。
依然としてANAでは単年での短期集中型、いわゆる「修行」でステイタスを狙える余地は残されているものの、そのハードルは資金と時間の両面で格段に高くなった。自社の経済圏により深くコミットする優良顧客を優遇する姿勢が鮮明になったと言える。
一方のJALは2024年1月、従来の制度を大きく刷新し、「JAL Life Status プログラム」をスタートさせた。いわば「長期積立型」のステイタスプログラムだ。この刷新の際、JALグローバルクラブ(JGC)の既存会員への、ワンワールド・サファイアステイタスの付与などの待遇は維持している。
飛行機への搭乗だけでなく、JALカードでの決済やJAL Payの利用、さらにはスマートフォンの通信、ガスや電気などのインフラサービス、住宅ローン、資産運用に至るまで、生活を取り巻くあらゆるJAL関連サービスの利用実績が「Life Status ポイント」として生涯にわたり蓄積されていく。短期間で一気に上級会員になることは実質不可能になったが、逆に言えば、飛行機に乗る機会が少なくても、日々の決済をJAL経済圏に集中させていれば、長期的に上級会員ステイタスを目指せる。
直近では、上級ステイタスの間口を広げたニュースもある。2026年9月30日、JGCプレミアステイタスの達成条件から「JGCへの入会」という前提条件の撤廃を発表した。これまで「JGC会員」でないと年間8万FLY ON ポイント(FOP)を獲得してもJGCプレミアにはなれなかったが、2027年以降はフライト実績さえあれば直接ワンワールド最高峰のエメラルド相当特典(JMBプレミア)を獲得できるようになった。
忙しいビジネスパーソンのための「マイルの使い道」
貯めたマイルで特典航空券を取る際のシステムにも、両社の性格の違いが色濃く出ている。
ANAの国際線特典航空券は、シーズン(ロー/レギュラー/ハイ)ごとに必要マイル数が固定されている。必要マイル数自体は比較的良心的だが、ハワイや欧米などの人気路線は枠が少なく、「マイルはあるのにキャンセル待ちばかりで全く取れない」という事態に陥りやすい。半年以上前から計画的に日程を組める人や、柔軟にスケジュールを調整できる人に向いている。
JALは「特典航空券PLUS」という変動マイル制を導入している。空席さえあれば、基本マイルに追加マイルを支払うことで確実に席を確保できるのが最大の特徴だ。お盆や年末年始などの繁忙期は必要マイル数が高騰するものの、「手持ちのマイルを大量に消費してでも、休める希望の日程で確実に旅行へ行きたい」という多忙な人にとっては、選択肢となるだろう。
傘下のLCCとリスク分散という選択
所属アライアンス以外の連携にも個性が光る。ANAは、グループ傘下のLCCであるPeachのポイントにマイルを交換できる。対するJALは、中長距離LCCである「ZIPAIR」のポイントにマイルを交換できる。これにより、ホノルルや西海岸などへJAL本体より低いマイル数相当で飛ぶ裏ワザ的な使い方が可能だ。
ここまで「どちらを選ぶべきか」という視点で解説してきたが、個人的には必ずしもどちらか一方に完全に寄せる必要はないと考えている。それぞれに強みが異なるうえ、昨今さまざまなルールの改定が頻繁に行われているため、両社とうまく付き合うことがリスク分散になるからだ。日頃のフライトでマイルやプレミアムポイント(PP)、FLY ON ポイント(FOP)を貯めつつ、アメリカン・エキスプレス、楽天ポイントやマリオット・ボンヴォイのポイントなど、どちらのマイルにも交換できる共通ポイントを軸に貯め、旅行の目的や行き先に応じて柔軟に使い分ける道もある。