管理職の仕事の約6割がAI(人工知能)に代替できる可能性がある。AI技術の発展に伴い、従来の管理職に求められていた「早く正確な判断」「メンバーへの的確な指示」といった評価基準が揺らぎ始めている。
AI導入でも仕事量は増加傾向
コンサルティング会社のEY(アーンスト・アンド・ヤング)が世界1万5000人を対象に実施した調査によると、従業員の64%が「仕事量が増えた」と感じている。また、人事管理や財務管理のクラウド型ERPを展開するWorkdayのグローバル調査では、AIによって節約された時間の約4割が、AIの生成物の確認・修正に再投入されているという結果が出ている。
「AIに作らせても、自分が手直ししないと出せない」「メンバーがAIを使って制作した成果物を、結局自分でチェックしなくてはならない」「AIで効率化したはずなのに、自分の実際の作業時間は減っていない」――こうした声は多くの管理職から聞かれる。
判断の「原則」が言語化されていない
なぜこのような事態が起きているのか。その背景には、管理職が持つ判断の「原則」や「ルールブック」が言語化されていないことがある。AIを効果的に活用するには、判断基準やプロセスを明確に定義し、AIに指示できる形に落とし込む必要がある。しかし、多くの管理職は経験や勘に頼った判断をしており、その根拠を言語化できていない。
リンクアンドモチベーションのプロダクトマネジャー、藤田理孝氏は「AIの進展で管理職はルールブックの『編集者』になる」と指摘する。つまり、AIが生成した選択肢や判断案を検証し、修正を加える役割が求められるという。
AI活用スキルはマネジメントスキルの写し鏡
AI活用スキルは、従来のマネジメントスキルの延長線上にある。AIに適切な指示を出すためには、業務プロセスを分解し、優先順位を付け、判断基準を明確にする能力が必要だ。これは、チームを率いる管理職に元々求められていたスキルと共通する。
藤田氏は「優秀な管理職とは、早く正確な判断ができる人、メンバーの状況をよく見ている人、的確な指示を出せる人」と定義した上で、AI時代には「判断のルールブックを言語化し、編集できる人」が評価されると述べている。
残る仕事は「判断のルールブックの言語化」
AIに代替されない管理職の仕事とは、具体的に何か。それは「判断のルールブック」を言語化し、組織内で共有・更新することだ。AIが大量のデータからパターンを抽出し、推論を提示する時代において、人間の管理職はその推論の前提や限界を理解し、必要に応じてルールを修正する役割を担う。
例えば、人事評価の判断基準をAIに学習させる場合、評価項目や weighting(重み付け)を明確に定義し、過去の評価事例と照らし合わせて妥当性を検証する。こうした作業は、AIが単独では行えず、人間の判断と責任が不可欠である。
藤田氏は「管理職の6割の仕事がAIに代替できるという試算がある。残りの4割は、AIを活用してより高度な判断や戦略立案に注力すべきだ」と述べている。
管理職の役割再定義が必要
AIの進展に伴い、管理職の役割は大きく変化する。従来のような「指示・命令型」から、「編集・調整型」へとシフトする必要がある。具体的には、AIが生成した情報を編集し、組織の目標に合致するように調整する能力が求められる。
また、AIの活用にはリテラシー向上が不可欠だ。管理職自身がAIの原理や限界を理解し、適切に使いこなせるようになる必要がある。企業は研修や学習機会を提供し、管理職のスキルアップを支援すべきである。
藤田氏は「AI時代の管理職は、ルールブックの編集者として、組織の判断力を高める存在になる」と結論付けている。



