NECは9月2日、OpenAIやAnthropicの「フロンティアAI」(先端AI)などを活用したセキュリティ対策サービスを9月から提供開始すると発表した。ITインフラの脆弱性の検出、リスク分析、対策の提案などをAI技術を用いて支援する。金融機関、製造業、流通サービス業から提供を始め、3年間で売上高300億円を目指す。
社内検証で実効性を確認
サービス化に先駆けて、NEC社内のIT環境をフロンティアAIで検証したところ「実際に脆弱性が見つかり、それを修正した」(NECセキュアシステムプラットフォーム研究所の冨田範人所長)という。発見した脆弱性の件数や中身は非公開としている。
NECの森田隆之執行役員(Corporate EVP)は、同日の記者説明会で「フロンティアAIの悪用によってサイバー攻撃が自動化・高速化され、攻撃が無差別かつ同時多発的になっている」と指摘。攻撃の自動化に対抗するには、防御もAI化するしかない。さらに、未発見の脆弱性をAIで狙う攻撃が懸念される中、防御側もAIを使うことで検証・提案・対策にかかる時間を短縮できるとして「AI対AIになるだろう」と述べた。
3つのサービスで構成
新たなセキュリティサービスは「IT資産管理」「脆弱性管理」「脆弱性対処」をAI機能型の受託サービス「BluStellar Intelligent Managed Service」として展開する。この中で、OpenAIやAnthropic、米GoogleのフロンティアAIを利用する。顧客ごとの状況に応じて適切なAIモデルを選択するという。
同サービスを開発するに当たり、NECはAI企業と密に連絡した。各社が日本に向ける視線は熱いようで、森田氏は「Anthropicは、日本のセキュリティ動向を注視している。(中略)言ってしまえば、いま『一番の注目ポイント』であり、注視しているはずだ」と話す。
日本企業として初の戦略的協業
NECは4月に、Anthropicとの戦略的協業を電撃発表して大きな話題になった。同社は「日本および海外のNECグループへのClaude展開を進め、国内企業最大規模約3万人のAIネイティブエンジニア体制を構築します」と発表していた。
協業後の取り組みについて、森田氏は「一般社員にClaudeを全展開しており、業務にAIを適用している」とし、コーポレート業務などにAIを取り入れていると説明。IT領域ではコーディングAIを活用して「顧客のシステム構築」「ソフトウェア製品の開発」といったシステム開発業務をAIで高度化・効率化しているという。
「Anthropicとやり取りする中で、生成AIによるサイバー攻撃の高度化・自動化に対する危機感が高まってきた。Anthropicとの協業で『開発の高度化』『社員の業務効率化』『業界特化型アプリケーションの開発』に取り組んでいることがベースにあり、セキュリティも提供のターゲットの一つにしたことで、今回の話(BluStellar Intelligent Managed Serviceの提供)に至っている」(森田氏)
森田氏は「Anthropic本社のエンジニアとやり取りをした」と説明し、BluStellar Intelligent Managed Serviceを開発する際の「どのような条件にするか」「どう取り組んでいくか」といった点を詰めたという。4月からの取り組みがあったからこそ「密に連絡できた」と話す。
「日本のサイバー空間を守る」AI技術の活用
BluStellar Intelligent Managed Serviceは、大きく分けて3つのサービス――「IT/ネットワーク資産管理サービス」「脆弱性管理サービス」「脆弱性対処サービス」で構成している。顧客のセキュリティ対策状況に応じて、必要な要素を組み合わせて提供する仕組みだ。
脆弱性管理サービスには、同社が「.JP(日本のサイバー空間)を守る」というミッションを掲げて展開するサイバーセキュリティサービス「CyIOC」(サイオック)に活用しているAI技術「cotomi Security for Industry」を取り入れている。
同技術を用いることで、一般公開されている脆弱性リスト「CVE」(共通脆弱性識別子)などの外部情報と、フロンティアAIを使って発見した顧客のIT環境に存在する未公開の脆弱性情報を組み合わせて、リスクを分析。対応の優先順位付けや対策を提案する。未公開の脆弱性に対しては、システムの本番環境に影響を与えないネットワーク層に適用する修正コード「仮想パッチ」をAIが生成して迅速な対応につなげる。
2027年度には「自然復旧まで対応」目指す
BluStellar Intelligent Managed Serviceは、顧客のDXやAX(AIトランスフォーメーション)を支援するNECの価値創造モデル「BluStellar Scenario」(ブルーステラ シナリオ)の枠組みで提供する。9月から提供を始め、2026年度下期にかけて一部工程の自動化やラインアップの強化を実施する。
森田氏は「2027年度には『AIネイティブなIT運用』の実現を目指す。自律的な判断・対処や、未然の対応、自然復旧まで対応できるサービスとして高度化する」と意気込みを見せた。同サービスを通じて、AI時代に必要なセキュリティ対策を実現し、企業の対応力を強化させられるか。



