犯罪は変わった。警察も変わるべきだ。犯罪発生を受けて動く従来の事後捜査から、被害が生じる前に介入する「予防型」に広がるのは必然である。
警察白書が示すサイバー空間の脅威
令和8年版警察白書は「深刻化するサイバー空間の脅威と警察の新たなる展開」を特集し、サイバー空間が国民生活、経済活動に不可欠な社会基盤となる一方、ランサムウエア(身代金要求ウイルス)や詐欺など犯罪の舞台となったと強調した。
犯罪はデジタル技術を悪用して国境を越え、国家を背景とした安全保障上の脅威とも重なり合う。白書は警察活動の転換を訴えた。
法的な強さと新たな捜査手法
国は警察に「法的な強さ」を与えるべきである。警察庁は令和4年、警察法を改正し、重大サイバー事案について直接捜査する態勢を整えた。6年にはサイバー特別捜査部を発足させ、全国の警察から情報を集約して国際共同捜査につなげる機能を強化した。
今年10月には重大サイバー攻撃に使われるサーバーなどへ警察がアクセスし、不正プログラムを消去する「無害化措置」が始まる。攻撃後に犯人を追うだけでなく、被害を未然に防ぐ。警察活動の質的な変化だ。
サイバー犯罪だけでない。警察庁は8月、匿名・流動型犯罪グループ対策の有識者検討会を立ち上げ、匿流(トクリュウ)上位者のスマートフォンに遠隔でアクセスし、通信内容などを取得・分析する捜査手法を議論している。ここでも注目すべきは犯罪成立前の情報入手で被害防止を検討している点だ。
予防型捜査への転換と適正さの確保
国家的サイバー攻撃への対処で導入された「情報を入手し、危害が生じる前に介入する」との能動的サイバー防御の発想が組織犯罪捜査に広がろうとしている。
容疑ごとの縦割り捜査から集約捜査へ、都道府県単位から全国、国際単位へ、事後捜査から予防へ。8年は戦後警察の大きな転換点として記憶されるだろう。
変化に臆してはならない。警察は新たな法的武器を駆使し、組織犯罪の中枢を突き止め、壊滅に追い込むべきだ。権限と情報量が増し、発生前も介入する警察は今以上に強力な組織になる。見立てに固執した際の危険は過去の不祥事が証明する。白書は大川原化工機捜査の問題も記載した。
警察は強くなければ国民を守れない。同時に強さを誤らせない「適正さ」も不可欠だ。



